2008年1月29日(火)「しんぶん赤旗」

諫早訴訟

公金差し止め請求棄却

長崎地裁 弁護団など控訴確認


 国営諫早湾干拓事業の干拓農地(約七百ヘクタール)を取得するために長崎県(金子原二郎知事)が五十一億円もの公金を支出するのは土地改良法、地方財政法などに違反するとして、支出の差し止めと返還を求め、住民ら七十六人が提訴していた住民訴訟の判決が二十八日、長崎地裁で開かれ、今中秀雄裁判長は請求を棄却しました。

 干拓農地は県が全額出資する県農業振興公社が国から一括配分を受け、営農者にリース(貸し出し)されるもの。県は取得費五十一億円を農林漁業金融公庫などから借り入れ、償還に九十八年間かかるとしています。

 判決は、長期の償還期間について「問題があるものの、営農が成立する見込みが一応あり、回収の見込みがある以上、違法とまではいえない」などと指摘。公金の支出は「政策的判断として相当であるか問題になると考えられるが、合理性を欠き違法であるとまでは言えない」としました。

 弁護団、「諫早干拓への公金支出をやめさせる会」の会員、支援者らは閉廷後の報告集会で「不当判決だ」として、ただちに控訴する方針を確認しました。

弁護団が声明

 よみがえれ!有明訴訟弁護団は二十八日、諫早湾干拓公金支出差し止め住民訴訟の長崎地裁の判決について「不当性を厳しく糾弾する」とする声明を発表しました。

 声明は、今回の判決が、公金支出について「実施要綱の要求を満たすような使用処分計画を作成できるのかという疑問が生じる」「干拓農地における営農が被告および国の現在の想定どおりに実現するとの見込みを信用することができない」などといわざるをえなかったことを指摘し、原告の訴えを退ける「なんらの説得力もない」と批判しています。

 声明は「国がサボタージュしている中長期開門調査に道をひらくことは、被害者漁民のささやか、かつ、切実な要求」と訴え、一日も早く、潮受け堤防排水門を開放することを求めています。


有明再生へ思い新た

東京で集会

 「よみがえれ! 有明海訴訟」を支援する東京首都圏の会と諫早干拓への公金支出をやめさせる会は二十八日夜、東京都内で長崎公金支出差し止め訴訟判決の報告集会を開き、百六十人が集まりました。日本共産党の仁比聡平参院議員、民主党の国会議員が参加しました。

 長崎から駆けつけた馬奈木昭雄弁護団長は、「判決は県の主張について『自己に有利な主張は誇張し、不利な主張は軽視』とのべるなど、県の計画に根本的な疑問を示している。私たちの主張は、不当判決でも否定できなかった事実にもとづいたもの」とのべました。

 仁比参院議員は「宝の海有明海の再生、無駄な公共事業一掃のため、みなさんと思いを新たにしたい」とあいさつしました。

 漁民の原告三人も発言し、苦境を訴えました。佐賀県の平方宣清さんは「原油高と漁に出ても取れないこともあり、今月は二日しか漁に出ていません。みなさんの力をお借りして、有明海の再生と有明の漁民が希望を持てる国にしてほしい」と訴えました。集会では、怒りをバネに潮受け堤防排水門を開放する取り組みを強めようと呼びかけられました。

 同日昼、参院議員会館で行われた院内集会には赤嶺政賢衆院議員、紙智子参院議員が参加し、あいさつしました。


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