2008年1月28日(月)「しんぶん赤旗」

主張

アセス方法書

書き直して県民の判断あおげ


 沖縄県の仲井真弘多知事は二十一日、新基地建設(埋め立て部分)の環境影響評価(アセス)方法書の「書き直し」を求める知事意見書を防衛省に提出しました。

 方法書は、あまりにも内容がずさんです。県民がきびしく批判し、沖縄県環境影響評価審査会が「書き直し」と公告縦覧の「再度実施」を求めたのは当然です。知事の意見書もこの県民の声に押されたものです。防衛省は沖縄の要求にこたえ、方法書を書き直し、あらためて県民の判断をあおぐべきです。

米もジュゴン保護判決

 日米両政府が合意したキャンプ・シュワブ(沖縄県名護市)への新基地計画は、普天間基地(宜野湾市)の基地機能をさらに拡大した恒久的な最新鋭の基地づくりです。基地あるがゆえの苦しみを県民に押し付けるものです。だからこそ、七割もの県民が反対し続けています。新基地は、攻撃ヘリや輸送ヘリ、垂直に離着陸することも可能な最新の大型輸送機オスプレイ、C130輸送機などが使用することから、住民に爆音被害や墜落の危険と隣り合わせの生活を強いるのは明白です。

 方法書は、米軍が日常訓練などで住宅上空を飛行するといっているのに、どこを飛ぶのか、飛行経路さえ示していません。海兵隊員を運ぶ強襲揚陸艦も使用できるという大型の岸壁をつくると米軍がいっているのに、それも示していません。

 これでは“危険隠し”の方法書といわれても仕方がありません。方法書を書き直し、住民の判断をあおぐことなしに、アセス手続きを進めることは許されるはずがありません。

 新基地建設は大規模な海の埋め立てを伴います。ダンプカー約三百四十万台分の砂が海に投入されるといわれます。当然、海は汚れ、砂がたまり藻場がなくなるのは避けられません。防衛省の方法書が、これをどうするのか、その手法さえあきらかにしていないのは重大です。

 新基地建設予定地周辺の海域には天然記念物のジュゴンが生息しています。周辺海域にジュゴンのえさである藻場が広がっているために、生息できます。新基地建設はこの藻場を消滅においこみ、ジュゴンのすめない海に変えてしまいます。

 アメリカのサンフランシスコ連邦地裁は、ジュゴン保護裁判の判決で、「沖縄の危機にひんしているジュゴンへの影響を避けるよう配慮すべき」と米国防総省に申し渡しました。米文化財保護法を海外で適用し、在日米軍にジュゴン保護を義務付けたものとして画期的です。

 ジュゴンへの影響を懸念して米連邦地裁の判決は、米国防総省として環境影響調査を実施することを求めました。しかし、在日米軍は自らアセスを行いません。防衛省まかせです。その防衛省のアセスは方法書が示すように、アセスに値しない内容になるのは必至です。ずさんな方法書をもとにアセスを実施しても、ジュゴン保護にきびしい態度をとるアメリカの裁判所では通用しないことを政府・防衛省は知るべきです。

政府はごり押しやめよ

 すでに昨年十二月、沖縄県は滑走路部分について、方法書を「審査するに足りない」と「再検討」を求めました。防衛省は、審査会が「中止」を求めた、事前の環境現況調査をやめるどころか、海域動物調査の入札を公示するなどごり押しをつよめています。

 県民の命もくらしもかえりみない、政府の横暴を許さないたたかいを強めることがいよいよ重要です。



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