2008年1月27日(日)「しんぶん赤旗」

医療費抑制政策

現場から批判 中医協公聴会

地域医療が崩壊 看護師増員に逆行


 中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)が群馬県前橋市で開いた公聴会(二十五日)では、政府がすすめる医療費抑制政策に対して、現場の医療関係者から批判が相次ぎました。

積算根拠に疑問

 公聴会は、二〇〇八年度診療報酬改定に向けて、医療現場や患者などの声を聞くために開かれたものです。診療報酬を〇二年度から四回連続引き下げるなど、医療費の抑制を続ける政府に対し、現場から問題点を指摘する意見が目立ちました。

 前橋市の男性開業医は、〇八年度の改定率(全体で0・82%引き下げ)に対して「どういう根拠で積算されたのかわからない」と指摘。頻度の高い診療がどのように配慮されているのかなど詳しい説明がないと、納得するのが難しいと述べました。千葉市の歯科医師は、前回(〇六年度)の診療報酬引き下げの影響で歯科診療費が大幅な減収になったことを示し「歯科診療所の経営は非常に厳しく、診療所を存続することすら危うい状況だ」と改善を求めました。

 群馬県内の病院事務の男性は、医師不足の影響で、産婦人科と内科を三月末で閉鎖することになったと述べ「地域でお産を扱う病院がなくなり、入院・治療が必要な人の医療が完全に崩壊してしまう。地域の医療を支えるためには、医師の確保が最重要項目だ」と要望しました。

 診療所の再診料(七百十円)と病院の再診料(五百七十円)の格差を改めるとして、〇八年度診療報酬改定の焦点の一つとなっている診療所の再診料引き下げについては、地域医療を守る観点で引き下げに反対する意見が出されました。

 神奈川県保険医協会の男性は、診療所の再診料は医師の技術料だけでなく、スタッフの人件費や施設整備費なども含めて担っているもので、「引き下げによる経営への打撃ははかりしれない」と強調。〇六年度の改定以降、倒産する開業医が増えており、「再診料の引き下げで、地域医療の第一線を担っている診療所が成り立たなくなれば、地域医療の崩壊は目に見えている。残っている医療機関に患者が集中して、病院の勤務医の負担がさらに増えることにもなる」と指摘しました。

患者の命に直結

 「患者七人に看護師一人」を配置する医療機関の診療報酬を手厚くする「七対一入院基本料」について、〇八年度改定で「看護必要度」による評価を導入し、適用する医療機関を制限しようとしていることにも、反対意見が出されました。

 医労連の看護師の女性は「切実に求められている看護師増員に逆行するものだ」と批判。現在示されている評価項目では「いろんな違いがある病棟の業務をはかることはできないというのが現場の声だ」と指摘しました。また、「看護必要度」のチェックに時間と労力をさかれ、看護にあてる時間を削ることになれば「患者の命と安全を守るうえで有益なのか。いまでもてんてこ舞いの看護師たちにこれ以上の負担を押し付けないでください」と述べました。



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