2008年1月24日(木)「しんぶん赤旗」

衆参代表質問にみる

貧困打開・平和の願いと各党


 どの問題でも国民の切実な要求をとりあげ、その打開策を示し、自民党政治そのものの転換を求めた日本共産党。破たんした路線をごまかし、とりつくろいながら、なおしがみつく政府と自民・公明与党。「対決」を強調するものの自民党政治の大本をつくことができない民主党―23日終わった3日間の衆参代表質問を通して、各党の論戦の構図が浮かびあがりました。


くらし 経済

■共産党■ 軸足を大企業から国民へ

政府与党 大企業優遇を合理化

民主 示せない抜本改革策

 「経済政策の軸足を大企業から家計にうつせ」―。日本共産党の志位和夫委員長と市田忠義書記局長は、代表質問でこう強調し、貧困と格差拡大の原因となっているさまざまな分野での抜本的打開策を提起しました。

労働の規制緩和

 サラリーマンの平均給与が九年連続で減少。さらに、低所得と過酷な労働環境におかれている派遣労働者が激増しています。

 志位・市田両氏は、自民党政治による相次ぐ労働法制の規制緩和を厳しく批判し、企業の責任も追及しました。その上で、労働者派遣法の抜本的改正を求めました。

 ところが福田首相は、派遣労働者の増加は「価値観の多様化だ」などと強弁。制度の根幹についても「検討をすすめる」と述べるにとどまりました。

 民主党は、衆参代表質問に五人が立ちましたが、派遣労働の規制に踏みこんだ議員は一人もいませんでした。

社会保障の抑制

 志位・市田両氏は、「社会保障費の自然増の二千二百億円の削減をやめよ」と正面から迫り、相次ぐ社会保障改悪・負担増の背景となっている「社会保障費抑制路線」の転換を強く求めました。

 しかし、福田首相は「給付の合理化、効率化にも引き続き取り組む」と答弁。同路線の転換を拒否したのです。

 政府・与党は、国民の世論と運動の前に、後期高齢者医療制度の一部の負担増の一時的「凍結」を打ち出しています。志位氏は、「凍結」は「制度の破たんを認めたものだ」と指摘し、「制度の実施を中止せよ」と求めました。

 これにたいしても首相は、後期高齢者医療制度の「理念や方向性は適切」とのべ、冷たい態度に終始しました。

「逆立ち」税制は

 各党の違いは、税制でも鮮明になりました。

 「社会保障財源に、国民の暮らしを破壊する消費税を充てることはもとより反対だ」。志位委員長はこう強調。政府・与党による消費税増税のたくらみを断じ、大企業優遇税制の是正を求めました。

 ところが、福田首相は、消費税増税を含む税制の抜本的「改革」について「早期に実現を図る必要がある」と表明。大企業を優遇する研究開発税制については、技術革新を口実に、その拡充を合理化しました。

 民主党の古川元久税制調査会副会長も、消費税増税が必要と判断した場合、「国民の審判を受けた上で実行する」と明言し、増税派であることを隠しませんでした。

派兵恒久法

■共産党■ 「世界の流れに逆行」と批判

政府与党 民主党と協議し推進

民主 派兵でも自民と同じ

 福田首相は施政方針で、自衛隊の海外派兵を常時・迅速に可能とする恒久法を検討していく考えを表明しました。

 これに対して民主党の鳩山由紀夫幹事長は、恒久法の早期整備を盛り込み、新テロ特措法に対抗して提出した「対案」を紹介し、「自民党政権の外交・安保政策には、確固たる基本原則がない。原理原則もなく、一般法(恒久法)をつくれるはずがない」と主張しました。“民主党こそ恒久法を制定できる”と誇った形です。

 民主党の恒久法の「基本原則」とは、国連による軍事活動を含む強制措置への対応や、「憲法の下での自衛権の発動」に関するもので、集団的自衛権の行使=海外での武力行使を可能にする危険があります。

 福田首相は、鳩山氏の主張に対し、「野党とも十分協議をさせていただきたい」と述べ、民主党と協議を進めたい考えを示しました。

 さらに、自民党の尾辻秀久参院議員会長が、昨年秋の福田首相と小沢一郎民主党代表との党首会談で、恒久法制定が話し合われたことに触れたのに対し、福田首相は「有意義だ」と評価しました。

 志位委員長は、恒久法について、米国が世界のどこで起こした戦争でも、支援のために自衛隊を派兵する法的枠組みをつくるものだと告発。「戦争のない世界」をめざす流れこそ世界の圧倒的大勢だと指摘し、「この流れに逆らい、憲法九条を踏み破って恒久的な海外派兵法をつくる動きにきびしく反対する」ときっぱり表明しました。


道路特定財源で共産党

暫定税率廃止と中期計画撤回を提案

 焦点になっている道路特定財源問題ではどうか。ムダな道路建設を加速してきたガソリン税の「暫定税率」について政府・与党は廃止を拒否しています。日本共産党は、特定財源をやめて道路、福祉、教育などにも使える一般財源化、暫定税率の廃止、ムダな道路建設の大本になっている総額59兆円の「道路中期計画」の撤回を要求。環境対策として環境税の導入も提案しています。

 民主党は一般財源化、暫定税率廃止を主張していますが、道路中期計画の見直しはいっても撤回は求めません。朝日新聞23日付「社説」は、「政府案も民主案も反対」との見出しで、民主案について「(一般財源化、暫定税率全廃をしても)道路工事は減らさないと言う」と指摘。「野党のなかには、暫定税率を廃止して環境税を導入するとの主張もある。この視点は大切だ」としています。


消えない「大連立」の火種

 “対決”ぶりが報じられる政府・与党と民主党―。しかし、代表質問からは、「大連立」の火種がくすぶっている姿がうかがえます。

 自民党の伊吹文明幹事長は、昨年秋の福田首相と小沢民主党代表との党首会談で「閣内協力が話し合われ、最終的合意がなされたとうかがっている」と言明しました。

 そのうえで伊吹氏は「政策協議であれ、閣外協力であれ、大連立的閣内協力であれ、先進国では当たり前。野党にも、さまざまな形で政策協議に応じていただくよう切に要望する」と民主党に秋波を送りました。

 一方、民主党の輿石東代表代行は「政府・与党と意見が異なれば何でも反対し、総理の問責決議案を提出しようとは考えていない」「できる修正は折り合う」と主張。福田首相は「たいへん勇気づけられた。野党の意見も積極的に取り入れながら責任ある政治を遂行していく」と期待を込めました。



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