2008年1月21日(月)「しんぶん赤旗」

施政方針演説、道路特定財源

NHK日曜討論 市田書記局長の発言

(詳報)


 日本共産党の市田忠義書記局長は二十日、NHK「日曜討論」に出席し、福田康夫首相の施政方針演説や道路特定財源の問題について、与野党幹事長と討論しました。


 はじめに、福田首相の施政方針演説(十八日)について議論しました。

 司会者から「(福田首相のいう)生活者主役の政治が期待できるか」と問われ、市田氏は次のように発言しました。

施政方針演説

生産者、生活者痛めつけ具体策もなし

 市田 期待できないですね。

 「これまでは生産者重視だった。これからは生活者重視」とおっしゃったのですが、生産者はどうかというと、米作り農家の報酬は時間給にして二百五十六円です。中小企業の倒産は、昨年と比べると17・2%増え、不況型倒産がそのうち77%です。生産者も痛めつけられている。

 生活者はどうか。非正規労働者や日雇い派遣の増加といった雇用の破壊にきちんとした手だてを打とうとしない。社会保障の自然増を今年も二千二百億円カットし、後期高齢者医療制度で、七十五歳以上のお年寄りの年金から保険料を天引きし、医療は悪くするという問題もあります。社会保障の切り捨て、雇用の破壊という問題にどう立ち向かうかという具体的策が、施政方針演説を聞いている限りではありませんでした。

 一方、「消費税を含む税体系の見直しは早期にやる」、(自衛隊海外派兵の)「恒久法」づくりは協議しながらきちんとやるということだけははっきりしていた。

経済対策

家計あたためるために雇用、社会保障の充実を

 景気回復の問題で公明党の北側一雄幹事長は「構造改革はしっかりやらないといけない」としつつも、企業に使い勝手が良すぎる労働法制の見直しの必要性も指摘しました。市田氏は次のように述べました。

 市田 政府の「経済財政白書」や月例経済報告でも、企業部門は好調だがそれが家計に波及していないということを、初めて最近言い出されました。大田(弘子経済財政担当)大臣の演説も、企業は格段に体質が強化されたけれどもそれが賃金に波及していないという(ものでした)。

 国際競争力をつけるということで、大企業中心にリストラや雇用の破壊をしてきた。先ほど北側さんも、雇用の問題は重大だと(おっしゃった)。派遣労働ができたときは、最初は通訳など専門的な十三業種に限定されていたのに、原則自由化されたのが一九九九年です。それから非正規雇用労働者(が増えた)。その労働法制の規制緩和に、日本共産党以外は賛成されました。それが大本になって今の雇用の破壊が起こっているわけです。経済の軸足を大企業から家計に移して、家計をあたためるために雇用や社会保障の充実をやるべきです。

 しかも、企業といっても一握りの輸出中心の大企業が伸びているわけです。私は株価の暴落も、日本経済の脆弱(ぜいじゃく)さの反映だと思うんですよ。輸出頼みではだめだと思います。

 自民党の伊吹文明幹事長も「市田さんがおっしゃったように、輸出依存型から消費依存型に変えていくという政策をとることは大切なことだと思う」と認めました。

道路特定財源

一般財源化し、暫定税率は廃止
道路、福祉、教育、環境に活用

 次に、今国会の焦点の一つである道路特定財源の問題をめぐって、ガソリン税の暫定税率の廃止などについて議論になりました。

 与党側は「なぜ道路が必要かしっかりと説明することが大切」(北側氏)と発言。市田氏は次のように述べました。

 市田 道路特定財源そのものの一般財源化ということが前提だと思います。

 この制度ができたのは五十年以上も前で、当時、道路舗装率は全国で5%程度だったと思います。いま98%です。これは、道路だけにしか使えない税制ですから、これを道路にも福祉にも教育にも環境にも使える一般財源にするべきではないか。暫定税率は三十年ほど前につくられたわけですが、道路づくりを加速するための税率ですから、この際それは廃止するべきです。そのうえで、いま環境問題が重要問題になっていますから、二酸化炭素の排出量を考慮した環境税の導入について、国民の同意を得てきちんとやるべきです。

 「道路中期計画」というのがあります。これは五十九兆円という総額先にありきです。最初は六十五兆円といわれていましたが、一カ月もたたないうちに五十九兆円になった、それほどいいかげんなものです。この中身が本当にひどいむだづかいです。

 もちろん、除雪作業やバリアフリー化、ガードレールをつくる、地震に耐えうる道路にするということは、きちんとやるべきです。しかしこれは、道路特定財源をそのまま十年間も存続しなくてもやれるわけですから、むだな高速道路をつくり続けるという問題にはメスを入れる必要があると思っています。

「道路中期計画」

基幹ネットワーク整備など「国際競争力確保」に20数兆円

 「道路中期計画」の問題点について市田氏は次のように述べました。

 市田 こういうときになると自民党や政府は「地方を重視する。地方が大変だ」と(おっしゃるが)、この間、地方交付税は五兆円減らしています。農村を疲弊させ、中小企業を立ち行かなくさせて地方を破壊している政治への反省がまず必要だと思います。

 「道路中期計画」は十年間で五十九兆円、そのために暫定税率も維持するというわけです。中身をみると、基幹ネットワークの整備など「国際競争力の確保」というのがそのうちの四割で、約二十数兆円です。その代表例をいいますと、拠点空港や拠点港湾から高速道路のインターチェンジに十分でアクセスできるようにしようというものです。私は予定されている港湾を全部調べてみたのですが、その多くはいまでも十二分、十五分で行ける。十二分のところを二分縮めて“国際競争力の強化だ”と、そういうことも含めて五十九兆円。そのために暫定税率維持だという。

 それから、暫定税率廃止でガソリン代が下がると環境問題に影響するとおっしゃるが、暫定税率は環境対策のためにつくられたものではなくて、道路をもっとつくり続けるためにつくられているわけで、それは区別して考えるべきだと思います。一般財源化して、必要な道路のためには国がお金を出せばいいのです。

国会対応

雇用、社会保障、消費税、恒久法
国民の立場で議論する

 今後の国会での対応をめぐって、暫定税率の期限(三月末)の延長に必要な法案を期限切れに追い込むという民主党の戦略について、参院で民主党と統一会派をつくっている国民新党の亀井久興幹事長は「道路財源は現状維持という立場。民主党と最後まで一緒ということはいまの状況では難しい」と述べました。市田氏は次のように発言しました。

 市田 暫定税率は、道路特定財源の一般財源化にともなってなくすべきだという点では一致していますが、「道路中期計画」などについては必ずしも一致しているわけではありません。私たちは、いったん撤廃して必要な道路とむだな道路をきちんと精査すべきで、総額五十九兆円先にありきというのは問題だという立場です。

 それから、与党・野党ともに政局的にこの問題を扱うのではなくて、国民の暮らしの立場にたって議論をするべきです。(参院で日切れに持ち込むという戦術については)持ち込むということではなくて、議論の中で成立しない場合にはそういうことがあるということだと思います。

 解散・総選挙の問題も、私はガソリンだけじゃないと思うんですよ。雇用や社会保障、消費税、恒久法などの問題があり、私たちはそれを国民の暮らしの立場から正々堂々と議論しながら、解散・総選挙に追い込んでいく。“ガソリン解散”という狭いとらえ方は日本共産党はしていません。

 鳩山氏は「ガソリンの問題だけではないというのは、市田さんが話されたとおり。国民の暮らしにかかわる問題を全体としてとらえて、国民のみなさんの思いを反映させてたたかっていきたい」と述べました。


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