2008年1月21日(月)「しんぶん赤旗」

原油高 マグロ漁泣く

“値上がり分まるまる赤字”


 原油高騰が止まりません―。経費の「四割」が燃料代という漁船。漁師や船主から、「いくら経営努力をしても、もぉ限界だ」と悲鳴があがっています。首都圏の漁港を訪ねました。(遠藤寿人)


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(写真)クレーンでつり上げられるマグロ=神奈川県三浦市三崎港

 神奈川県三浦市の三崎港。東北地方の船がマグロの水揚げ中でした。オーストラリアのシドニー沖で八カ月の遠洋航海を終えたところです。

 高々とクレーンで引き揚げられる冷凍マグロ。威勢のいい作業とは裏腹に、船会社の五十代男性は「(原油高騰で)まるまる大変だぁ。マグロ船の九割は赤字じゃないか」と声を落としました。

 総経費に占める油代は四割に達し、給料分が三割、残りが運航経費に充てられています。

 一方、魚価は昨年よりも15%安く、男性は「今度の航海で三千万円の赤字。(油の)値上がり分がまるまる赤字だ。漁期のときだけに出航するか出航を見合わせることも考える」といいます。

 この航海で消費した油(A重油)は約一千キロリットル。海上自衛隊が、インド洋で米軍など外国艦船に補給した総油量は、六年間で四十九万キロリットル、税金二百二十五億円が投入されました。

 男性は「四百九十回も漁にいける量じゃねぇーか。これだけあればみんな本当ーに助かる。月が変われば、油の値段が上がるから、石油会社は出し渋るようになった。ふざけた話だぁ」と怒ります。

 「政府の対策は死にかけている人間に、内科的な治療を施しているようなもの」―というのは、三崎港でマグロ船を七隻所有する船主の男性です。太平洋で、船倉がマグロでいっぱいになったら帰港するというスタイルで操業しています。

 船主によると、A重油の値段は五年前の三倍。漁獲量が落ちているので一回の航海は、十五カ月で、三カ月ほど長くなっています。

 船主は「経費の四割が油。三年前は二割ほどでした。帰りの航海は、スピードを落とすよう指示しているが焼け石に水だ。もともと、マグロ船は、累積赤字が大きくがけっぷちに立っていた。経費がとれる船はほとんどない」と話します。

 東京湾の沿岸漁業ではどうか―。千葉県船橋市の五十代の親方は船三そうを所有、巻き上げ漁でスズキやアジを取っています。燃料は軽油で、二年前の二・五倍。一日一・二キロリットル使い十二万円ほどになります。「人を使っているから出漁しないわけにはいかない。もうけが減るだけだ」といいます。

 話がインド洋での給油活動や、原油高騰の要因である、投機マネーにおよぶと親方は、「国民の生活のために頑張っている産業をつぶしていいのか。零細のところはあきらめざるを得なくなっている。こういう産業にてこ入れをすることこそ本当の『国の力』ではないのか」と話しました。


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