2008年1月18日(金)「しんぶん赤旗」

授業は増加 統制強化

中教審 指導要領改定へ答申


 中央教育審議会(山崎正和会長)は十七日、「学習指導要領の改善について」の答申を渡海紀三朗文部科学大臣に提出しました。教育基本法改悪後初めての学習指導要領改定の方向を示したもので、小中学校での授業時間増や教育活動への統制を強める内容を盛り込んでいます。

 答申は今回の改定について教育基本法などの「法改正を十分踏まえる必要がある」と明記。「伝統や文化に関する教育や道徳教育、体験活動」を重視するとしています。

 また、「学力の重要な要素」を(1)基礎的・基本的な知識・技能の習得(2)知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等(3)学習意欲―の三つであると規定し、この内容にそって「音読・暗唱」「反復学習」「レポートの作成、論述」など指導方法を具体的に細かく提示しています。

 さらに各教科の「重点指導事項例」を示し、それを子どもが身につけたかを全国学力テストなどでチェックする仕組みをつくるなど教育活動への国家統制を強めるものになっています。

 前回(一九九八年)の改定で削られた「台形の面積の求め方」(小学校算数)、「イオン」「生物の進化」(中学校理科)など多くの項目が復活しました。小中学校の授業時間は各学年とも現行より週当たり一―二時間増やす方針です。総合的な学習の時間は小中学校とも縮減。中学校の選択教科は標準の授業時間以外で行うとされ、事実上の廃止となりました。

 小学校に外国語活動の時間を導入。中学校の体育で武道を必修化するとしています。

 答申を受け文科省は三月までに小中学校の学習指導要領を改定します。


解説

教育基本法改悪を具体化

 学習指導要領は小中高校などの教育内容を文部科学省が示すもので、ほぼ十年ごとに改定されています。今回は教育基本法改悪後、初の改定で、中教審答申は教基法改悪の具体化の一つです。

 答申は「愛国心」育成を目指して道徳教育の充実を掲げ、「伝統や文化に関する教育」を強調。中学校の体育で武道を必修化、国語・社会・音楽・美術なども伝統文化に重点を置いています。道徳の教科化については賛否両論を併記しました。

 また授業の内容や指導法を細かく指示。「PDCAサイクル」として、「重点指導事項例」など文科省が定めた目標が達成されたかを評価し、「改善」を迫るシステムをつくろうとしています。

 授業時間や教育内容の増加は「詰め込み」を激しくし、子どもの負担が増大するという声が上がっています。答申は習熟度別指導を積極的に実施するとしており、授業についていけない子が放置されるなど格差拡大のおそれがあります。

 いま求められるのは上からの統制ではなく、教師が子どもとじっくり向き合い、ていねいな教育活動ができるような条件整備と、教育実践の自由を保障することです。(高間史人)



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