2008年1月13日(日)「しんぶん赤旗」

新テロ法追及 論戦をリード

共産党「存在感増す」 地方紙


 政府・与党が十一日、参院での否決にかかわらず、衆院では数を頼りに再議決・成立を強行した新テロ特措法。昨年十月の国会提出以来、国会審議が深まるにつれて拡大した反対世論を押し切っての暴挙です。日本共産党国会議員団は、法案の本質を一貫して明らかにし、政府・与党を追い詰める論戦をリードしてきました。(田中一郎)


テロ根絶の筋道示す

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(写真)衆院テロ特別委で追及する笠井亮議員=2007年10月30日

 「爆弾を落としながら、和平の話し合いをおこなうなどできない」(昨年十一月の日本共産党国会議員団総会での志位和夫委員長のあいさつ)

 日本共産党は同法について、米国による報復戦争を支援するもので、“テロ根絶逆行法”だと告発してきました。

 アフガニスタンのカルザイ政権も、タリバンを含む武装勢力との交渉による和平を目指す「平和と和解のプロセス」に踏み出していることも示し、「和平と平和のプロセスを後押しする外交努力こそ、いま日本に一番求められている」(志位委員長)と、テロ根絶のための積極的な提言をしてきました。

 政府は当初、海上自衛隊の給油対象について、テロリストの拡散を海上で防ぐ「海上阻止活動」を行う米艦などに限定されると宣伝していました。

 しかし、インド洋の米艦は、海上阻止活動、イラク作戦、空爆などのアフガン作戦を一体として遂行しています。

 赤嶺政賢議員は、米艦が海上阻止活動とアフガン空爆の任務を兼ねている場合、給油できるのかを追及。町村信孝官房長官は「問題ない」と答弁し、報復戦争支援が可能だという同法の危険性を認めざるをえなくなりました。(昨年十月の衆院テロ特別委員会)

政府の合理化論崩す

 米軍の攻撃は、罪のない市民を殺害し、自爆攻撃の激増をもたらしました。赤嶺氏の質問に、高村正彦外相は、二〇〇二年にゼロだった自爆攻撃が、〇七年には八月末時点だけで百三件に達したことを認めました。(昨年十一月の衆院テロ特別委員会)

 こうしたもとで、カルザイ大統領が踏み出したのが、「平和と和解のプロセス」でした。

 この動きを指摘した笠井亮議員の追及に福田康夫首相も、同プロセスを「重要だ」と答弁しました。(昨年十月の衆院テロ特別委員会)

 それでも政府は、カルザイ大統領が「米軍はアフガンを助けるために来ている」と発言しているとし、報復戦争を擁護し続けました。その合理化論を打ち砕いたのが井上哲士参院議員でした。

 実は、このカルザイ大統領の発言は、米CBSテレビ番組でのインタビューでのものでした。同番組で大統領は、先の発言に続けて、「しかし(アフガン国民は、戦争が始まって)五、六年もたって、なぜいまだに空軍力が必要か全く理解できない」と述べ、空爆の中止を求めていたのです。

 井上氏がこのことを示すと、高村正彦外相は、空爆中止を求めた発言部分について「(報告が)来ていなかった」などと弁明。政府が同法の成立に固執する合理化論は、完全に破たんしました。(昨年十二月の参院外交防衛委員会)

 「地元に帰っても(有権者から)しかられっぱなしだ。いつまでもアメリカにしっぽを振っていていいのかという気がしてきた」。笠井氏に自民党議員までが、こうこぼすまでになりました。

交流協会初めて追及

 国民の怒りを広げたのは、派兵を担う防衛省の腐敗と、軍事利権疑惑の際限のない広がりでした。ゴルフ接待などの見返りに「山田洋行」元専務の宮崎元伸被告に便宜を図っていた前防衛事務次官の守屋武昌被告の逮捕が発端でした。

 守屋被告が、宮崎被告との宴席に「防衛庁長官経験者もいた」と証言したのは、証人喚問での赤嶺氏の追及でした。その後、守屋被告が、この長官経験者について、額賀福志郎財務相と久間章生元防衛相だと明らかにする端緒となりました。

 こうして守屋、宮崎両被告だけではなく、日米軍需企業や自民、民主、公明の国防族議員がメンバーとなっている「日米平和・文化交流協会」を舞台にした政軍財の大掛かりな癒着構造に注目が集まりました。

 臨時国会で最初に同協会の問題を取り上げたのは、大門実紀史議員でした。(昨年十一月の参院財政金融委員会)

 この追及のなかで、民主党の前原誠司副代表が、同協会の理事を退任。同協会の秋山直紀常勤理事の参考人質疑が国会の場で実現するまでにいたりました。

 石破茂防衛相も「『油を出すより膿(うみ)を出せ』と言えば、『それはなるほどそうだ』と思う方もあるだろう。事実として認めねばならぬのだろうと思う」と述べざるをえなくなったのです。


民主党 政府に“助け舟”

 新テロ特措法をめぐる最終盤の攻防で、多くのマスメディアから「迷走を重ねた」と報じられたのは、民主党でした。

 与党との対決姿勢を強調していた同党が打ち出した「対案」の中身は、アフガン本土への自衛隊派兵を可能にするもの。さらに自衛隊派兵についての恒久法の早期整備まで盛り込まれています。

 新テロ特措法も、参院審議の最終盤になって、これまでの廃案をめざす立場から継続審議を求める方針に転換。対案とあわせ、政府に「助け舟」を出した格好となりました。

 しかも、小沢一郎代表は十一日の同法再議決の採決の直前、退席し、棄権してしまったのです。

 日本共産党は、継続審議方針にきっぱり反対し、あくまで廃案をめざすべきだと主張。結局、民主党はこの方針をやめざるを得ませんでした。

 民主党の迷走のなかで、日本共産党は「存在感を増した」(中国新聞、十日付)との評価も聞かれました。


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