2008年1月12日(土)「しんぶん赤旗」

薬害肝炎救済法が成立

“命の問題一番に”

共産党が貫いた立場


 「命の問題を一番大事にしていただきました」。薬害肝炎全国原告団代表の山口美智子さんらは、議員立法化の作業が行われている被害者救済にかんして、日本共産党の志位和夫委員長との懇談でそう謝意をのべました。命がけの原告のたたかいと世論の後押しで「被害者救済法」が11日、成立しました。日本共産党が薬害肝炎問題の全面解決とすべての肝炎患者の恒久対策に向けて果たした役割についてふりかえりました。(菅野尚夫)


全員救済 何度も提案

写真

(写真)日本共産党控室を訪れた薬害肝炎訴訟の原告(左)と握手する国会議員団。中央奥は志位和夫委員長=7日、国会内

 早期発見と治療が求められるウイルス性肝炎。日本共産党は、公費負担による検査を受けられるように一貫して要求してきました。

 二〇〇一年三月に血液製剤が投与された人たちを対象に、公費負担で検査を受けられるよう主張。同年八月に厚労省は〇二年予算概算要求に四十九億円を盛り込み、それまで個人負担が基本だった肝炎ウイルス検査が公費で受けられるようになりました。早期発見、早期治療を求めてきた人たちに朗報となりました。

 日本共産党は〇六年七月、「薬害肝炎被害者とすべてのウイルス性肝炎患者救済のための恒久的対策の確立を政府に求める提言」を発表。感染経路の立証を前提にせずに、救済策を講ずること、被害者に責任を認めて謝罪と医療費や生活支援などの補償をすること、第三者機関を設置して薬害を発生させた真相究明をすること―などを提言しています。

 昨年十月二十五日には、志位和夫委員長が「すべての薬害肝炎被害者 ウイルス性肝炎患者の救済を」と、日本共産党の立場を会見で表明。二十八万人にのぼる投与者への肝炎感染リスクの告知、薬害肝炎患者の救済とともに薬害と特定されない三百五十万人といわれているウイルス性肝炎患者にたいして国の責任で医療支援、生活支援などをおこなう恒久対策を提言しました。

 日本共産党は、今回の議員立法化についても、原告と連帯して国に薬害を発生させ、拡大した責任があることを明記させ、すべての被害者の一律救済のために力を尽くしました。

国と企業の責任追及

 日本共産党は、薬害肝炎を発生させた血液製剤「フィブリノゲン」の製造・販売を承認した国の責任について二〇〇〇年の早い時期から厳しく国会で追及してきました。

 肝炎ウイルスに汚染された「フィブリノゲン」製剤を投与されてC型肝炎になった被害者が国と製薬企業に損害賠償を求めた薬害肝炎訴訟は、薬害エイズ訴訟が和解した一九九六年三月以降、血液製剤の安全性確保が問題になる中で、新たにクローズアップされた薬害です。

 製造販売したのは旧ミドリ十字(現田辺三菱製薬)。薬害エイズ訴訟で刑事責任を問われた被告企業です。

 〇二年六月、小池晃参院議員は、参院厚生労働委員会で、独自に入手した厚生省薬務局監修の『生物学的製剤基準解説』(一九七三年)に基づき、フィブリノゲン製剤からの肝炎感染の頻度は輸血による感染よりも高率で、危険だと指摘していることを示して「製造販売を許可した国は責任を認めて救済にあたれ」と迫りました。

 小池議員は、外国の医学文献も紹介。(1)世界的に有名な医学雑誌『JAMA』(米医師会雑誌)が一九六六年二月七日号で、フィブリノゲン製剤を投与された人の6%―35%の高率で肝炎を発症していることを記述して安易な使用を戒めていること(2)イギリスの『イギリス薬局方』(BPC)は、フィブリノゲン製剤よりも少人数からつくる「クリオ」製剤の方が危険が少ないとする見解を述べていること―を示して、危険を知りつつ販売を黙認して被害を拡大させた厚生労働省の責任を追及しました。

 今国会では、旧ミドリ十字の設立者の内藤良一氏(故人)が、フィブリノゲン製剤を製造・販売する前に同製剤によって「五百人の死亡者を招く」と危険性を予測しながら、命より利益を優先して被害拡大を行った犯罪を追及。いまだに謝罪も償いもしない加害企業の悪業を暴露して、「応分の負担(企業三分の二、国三分の一)」(厚生労働大臣答弁)を約束させました。

政官業の癒着ただす

 薬害スモン、薬害エイズ、薬害ヤコブ病、薬害肝炎…。「二度と薬害を繰り返さない」と、国と製薬企業は被害者に誓ったはずです。しかし、根絶されずにきたのはなぜなのか?

 薬害防止に努めなければならない厚生労働官僚が製薬企業に多数天下りしています。さらに、製薬企業は、自民党、公明党、民主党など厚労族議員に政治献金をして薬務行政をゆがめてきたことが、その背景にあります。

 日本共産党は、こうした薬害を生む政・官・業の癒着を断ち切るように国会で追及してきました。

 薬害エイズ事件では、〇二年二月の衆院予算委員会で岩佐恵美衆院議員(当時)が旧ミドリ十字への薬務局長をはじめとする官僚の多数の天下りと、自民党の政治資金団体「国民政治協会」への毎年数百万円から一千万円を超える多額の政治献金をしている実態を暴露して、「天下りと企業・団体献金」の禁止を迫りました。

 〇二年三月二十九日付本紙は、フィブリノゲン製剤の承認申請業務を担当した厚生省細菌製剤課の課長補佐だった小玉知己氏が、同製剤が承認許可された直後の一九六四年八月にミドリ十字に天下りし同社副社長までのぼり詰めたことを明らかにしています。

 昨年十月二十五日の参院厚生労働委員会で小池晃議員は、青森県でフィブリノゲン投与による集団肝炎感染事件が起きた時、薬害肝炎発生の事実を「積極的には公表しない」ことで厚生省官僚とミドリ十字の今村泰一東京支社長が合意していたことを暴露、追及しました。

 この支社長は元厚生省企画課長補佐でした。厚生省の現職官僚と天下りOBが共謀して薬害隠ぺいを話し合っていたのです。


薬害肝炎訴訟の経過

1964年 非加熱製剤フィブリノゲンを国が製造承認

 87年 青森県でフィブリノゲンによる肝炎集団感染が発覚

2001年3月 日本共産党が公費で検査を主張し実現

 02年6月 小池晃議員、国が感染リスクが高いことを知りながら製造販売を許可したことを追及

 10月 東京、大阪両地裁で集団提訴。以後、仙台、名古屋、福岡各地裁に拡大

 06年6月 大阪地裁で初の判決。国と企業の責任認める。その後東京、名古屋、福岡でも同様の判決

 07年9月7日 仙台地裁、国の責任認めず。5地裁の判決出そろう

 10月 小池議員、旧ミドリ十字への天下りの実態を暴露

 11月7日 大阪高裁、和解勧告

 12月9日 原告側、一律救済でない和解案の拒否を決定

 12月13日 大阪高裁が救済範囲を限定した和解骨子案を提示。原告側が拒否

 12月16日 原告側、支援費用を上積みした国側の提案も拒否表明

 12月20日 国が支援費用を積み増した修正案を高裁に提出。原告側は和解協議打ち切りの方針表明

 12月23日 福田康夫首相、「全員一律救済のための議員立法を行う」と表明

 12月25日 首相が原告団と面会し謝罪

 12月28日 国の責任認めた救済法案骨子について、与党PTと原告側が合意

 08年1月7日 与党が救済法案を衆院に提出

 1月8日 救済法案、衆院を通過

 1月11日 参院で救済法可決、成立



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