2008年1月7日(月)「しんぶん赤旗」

公営住宅

30%が家賃値上げ

国交省 低額所得者に限定


 国土交通省は昨年十二月、公営住宅法の施行令を改正する政令を出しました。内容は、公営住宅に入居申し込み可能な収入の上限の引き下げ、現居住者の家賃値上げで、二〇〇九年四月実施を予定しています。

 具体的には、政令月収(世帯の年間粗収入から給与所得・配偶者・扶養親族控除をおこなったうえでの月収)を現在の二十万円から十五万八千円にし、住宅の事実上の明け渡しを迫られる「高額所得者」の政令月収を三十九万七千円から三十一万三千円に、それぞれ引き下げるものです。結果として現在入居している約30%の世帯への家賃の負担増をもたらすことになります。

 国交省は、この措置により▽住宅困窮度の高い(収入の低い)世帯に対し的確に公営住宅を供給できる▽募集戸数も現在の九・六万戸から十五万―二十万戸程度になる▽全国平均の応募倍率も現在の九・九倍から最小四倍程度になる―などとしています。

 また、現在の入居者の家賃の急激な負担増を避けるため、五年間で段階的に家賃を引き上げるなど激変緩和措置を講ずるとしています。

 この政令改正は昨年、実施が検討されていましたが、公営住宅協議会など居住者団体の反対で実施が延期されていました。


解説

住宅増設こそ必要

 公営住宅は、国と地方自治体が協力して、健康で文化的な生活を営むための住宅を整備し、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することを目的としています。しかし、現在は建て替えを除いて新規建設はほとんど皆無で東京都では平均三十二・一倍の高倍率になっています。

 今回の政令改正は、収入が少しでも高くなった世帯を事実上追い出し、限られた低額所得者しか入居できないようにして倍率を下げようとするものです。

 しかし、応募倍率がなぜ下がるのか科学的な根拠はありません。しかも家賃が上がる世帯にたいして急激な家賃上昇を抑えるとした激変緩和措置も実際に管理している地方自治体に通知するだけで、実施主体の地方自治体がそれを確実におこなう保障はありません。

 所得格差の進行で年収二百万円以下の貧困層が一千万人を超え、“ネットカフェ難民”といわれる住居なし層も増えています。低額家賃で一定の質をもった民間賃貸住宅が供給されていない現在、公営住宅の新規建設を急ぐことこそが求められています。

 今回の措置により公営住宅には高齢者や低収入者ばかりになり、コミュニティーの崩壊がすすむ公営住宅の問題点がいっそう増幅することが懸念されます。(日本共産党国民運動委員会・高瀬康正)



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