2008年1月4日(金)「しんぶん赤旗」

住宅難民に国が保障

フランス 「住居権法」発動

受け入れ態勢整備が課題


 フランスで一日から、「住居への対抗的権利にかんする法律」(住居権法)が施行されました。路上生活者を含めて約百三十万人いるといわれる「住宅難民」が、「適正な住宅」を国に要求できるものとして期待されています。(パリ=山田芳進 写真も)


約60万人対象

写真

(写真)医療奉仕団体が配給したテント。「みんなと同じように私も住居が欲しい」と書かれています=2日、パリ

 仕事始めの二日朝。全国の県庁で登録希望者が列をつくりました。

 パリの県庁には、開庁前に約三百人が集まりました。入手した登録用紙に「住宅難民」支援組織のボランティアの助けで必要事項を記入し提出しました。

 五年ほど前にポルトガルからやってきたルイスさん(48)は、七カ月前に解雇されて家賃を払えなくなり、現在は「不法侵入」した建物の中で暖房なしの生活です。「書類を提出して、ひとまず安心」と話します。

追い出されても

 昨年三月に公布された住居権法は、「適正で独立した住居」を、自らの手段で獲得・維持できないすべての合法的仏在住者に対し、国がその権利を保障するものです。同法は、その対象として、「住居のない者」「行くあてもなく、現在の住居を追い出される恐れのある者」など六つの優先的カテゴリーを設定しており、それらに当てはまるのは約六十万人と推定されています。

 住居権申請者は、県庁もしくは家族手当事務所に書類を提出します。検討後に住居権が認められたにもかかわらず、県が適切な住居を紹介しなかった場合には、権利者は今年十二月以降、行政裁判所に申し立てることができます。裁判所は二カ月以内に審理し、国に対し権利者への住居の紹介を命令することができます。

現状は約6万戸

 問題は、権利者の受け入れ態勢です。現在、受け入れ可能な公的住宅は、全国で約六万戸。ブタン住宅・都市問題大臣自身、昨年十月の国会で、「十四カ月で(今年末まで)五十万戸を建設することは不可能」と述べています。同法の誕生に尽力し、成立後は成り行きに注目していた支援組織は、「同法は適用不可能」と指摘しています。

 パリ県庁の事務局長は「すべての申請者の要求をすぐに満たすことは不可能だが、法律の施行が社会的住宅建設のきっかけになるだろう」と語っています。


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