2008年1月3日(木)「しんぶん赤旗」

北アで雪崩、4人が死亡

経験あっても乏しい知識


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 一日午前零時十五分ごろ、岐阜県高山市奥飛騨温泉郷神坂、北アルプスの槍平小屋(標高一、九九一メートル)付近で雪崩が発生し、テントの中にいた二つのパーティーの計七人が巻き込まれたと一一九番がありました。いずれも近くにいた別の登山者に助け出されましたが、男性四人が意識不明となり、同日午後二時前、現場に到着した県警山岳警備隊が四人の死亡を確認しました。ほかの三人は無事でした。

 雪崩事故は、安全だと考えられていた山小屋の近くで起きました。小屋は比較的雪崩の届きにくい場所に建てられるため、その周辺は冬季も幕営地としてよく利用されています。しかし、二〇〇六年に北アルプスの岳沢ヒュッテが倒壊した例があるように山小屋が雪崩被害に遭うことは珍しくはありません。

 しかも今季の年末年始は、富士山の気温がマイナス23・9度(十二月三十一日午前九時)を示したように強い寒気に覆われ、高山では大量の降雪を伴う悪天候が予測されました。短期間に大量の降雪があれば雪崩の危険は増します。冬の幕営地はそうした条件に応じて安全対策を取らなければなりません。

 事故に遭ったパーティーはそれなりの経験を持つ山岳会のリーダーが引率していました。にもかかわらず、幕営地の選定では雪崩に無警戒だったのが気になります。十一月に十勝連峰で雪崩に埋まったのは日本山岳会北海道支部のパーティーでした。冬山初心者の起こした事故ではないところに、深刻さがあります。

 雪崩事故防止では日本勤労者山岳連盟(労山)が雪崩講習会を開くほか、さまざまな団体が研修会を開くなど取り組みが広がっています。しかし、労山の井芹昌二遭難対策部長は「事故を起こしたリーダーは雪崩に関する知識が古いことが多い。一般的にはまだ十分に知られていないのではないか」といいます。

 また、年間降雪量は変わらなくても一時期にまとまって積もるように降り方が変わり、雪崩が起きやすくなっていると指摘する研究者もいます。雪山に足を踏み入れる登山者は雪崩に備える知識が不可欠になっています。(青山俊明)


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