2007年12月26日(水)「しんぶん赤旗」

「徳育教科化」また提言

教育再生会議が3次報告


 政府の教育再生会議(野依良治座長)は二十五日、首相官邸で総会を開き、第三次報告を決定しました。

 報告は、国が特定の価値観を子どもたちに押し付けることにつながる「徳育の教科化」を盛り込みました。「徳育の教科化」は、中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)で批判が相次ぎ導入が見送られたものですが、再び提言しました。

 また、検討課題となっていた教育バウチャー(利用券)制度導入は、「学校選択制と児童生徒数を勘案した予算配分」をモデル事業として実施すると明記しました。子どもが集まらない学校には少ない予算しか与えないもので、教育の機会均等という公教育の根幹をゆるがすことにつながります。さらに、学校の「適正配置」として、統廃合を推進する市町村を国が支援することを提起しました。

 「大学改革」では、授業の三割を英語で行うことや、国立大学の学長選挙廃止を打ち出しました。国立大学法人運営費交付金について、「一律的な配分は行うべきではない」としています。

 また、小中一貫校の制度化検討など、小中高大学の「六・三・三・四制」の弾力化も求めました。

 同会議は来年一月中に、いままでの三回の報告を総括するために最終報告をまとめる方針です。


解説

安倍流「改革」に固執

 二十五日に決定した教育再生会議の第三次報告は、同会議の掲げる「教育再生」が国民の願いと相いれない姿を浮き彫りにしました。

 同会議は、昨年十月に安倍晋三前首相の肝いりで発足しました。委員には教育研究者を含めず、会合はマスメディアにも完全非公開という異常な状態で行われました。

 同会議は一月の一次報告で、教員の身分を不安定にする教員免許更新制の導入や、副校長・主幹などの新たな管理職の設置などを提言。これらは通常国会での教育三法成立で、実施が強行されました。

 六月の第二次報告では、授業時間数10%増や、教員評価を踏まえた「メリハリある教員給与体系」の実現などを提言しました。教員の目を子どもではなく管理職に向けさせ、権力統制を強めると批判されているものです。

 現場の声に耳を貸さず、上からの統制と競争を強める同会議の方針は、教育現場の混乱を招き、真剣な教育改革を求める国民との矛盾を広げてきました。内閣の中からも、「地方では、あそこ(再生会議)でなされている議論でどうかなというのはある」(増田寛也総務相)などの異論が出ていました。

 にもかかわらず、三次報告は、学校を競争と混乱に陥れた全国学力テストの活用や、児童・生徒が少ない学校を予算で差別する教育バウチャー制度のモデル事業実施など、いっそう教育現場を困難にするものを盛り込みました。安倍前首相が退陣したにもかかわらず、国家統制の強化・競争と選別の激化という安倍流「教育改革」路線にしがみつこうとする福田内閣の姿勢も問われます。

 教育再生会議は一刻も早く解体し、広い国民の英知を集めた、憲法と教育の条理に立脚する抜本的な教育改革をする方向に踏み出すことが必要です。(小林拓也)



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