2007年12月23日(日)「しんぶん赤旗」

後期高齢者医療

加入対象の障害者ら不安

現制度からの「脱退」通知

小池議員申し入れに 厚労省、是正措置を約束


 「後期高齢者医療制度に入るかどうか、早く決めてください」―。六十五―七十四歳の障害者らのもとに市役所からこんな通知が届き、不安を広げています。日本共産党の小池晃参院議員の是正申し入れに、厚生労働省の担当者は「適当なやり方でない」と是正措置を約束しましたが、なぜこんな混乱が生まれたのでしょうか。


 来年四月から実施予定の七十五歳以上の後期高齢者医療制度は、六十五―七十四歳の障害のある人や寝たきりの人、人工透析患者など約百万人も加入対象にしています。現行の「老人保健制度」に入っている人は自動的に新制度に移りますが、本人が申請すれば脱退することができます。

不明な点だらけ

 いま問題になっているのは、この「脱退届」を早く出せ、と自治体が迫ったことによるものです。大阪府枚方市では「提出期限十二月二十五日」と期限を区切る文書を送付。別のある自治体では、期日までに手続きをしないと、未来永劫(えいごう)変更できないかのような記載もしていました。

 このような“早期決断”を迫ることは、まったく道理がありません。

 制度の実施は来年四月からです。保険料はようやく概要が固まったものの、どんな医療内容になるのか、都道府県が独自に実施して医療費助成との関係はどうかなど、六十五―七十四歳の障害者が新制度に入るための、判断材料はまだまだ不明な点だらけです。

 厚労省も「三月末まで決められない人がいて当たり前」という立場をとっています。

 自治体が、「脱退届」を急がせた背景にはなにがあるのでしょうか。それは、保険料を年金から天引きするという、後期高齢医療制度のしくみにあります。

 来年四月十五日から、きちんと年金天引きを実施するためには、市町村は来年一月初めまでに、社会保険庁にデータを提出しなければなりません。そのために、「年末までに年金天引きの対象者を特定する必要があると判断した自治体が行っている措置だろう」(厚労省)というわけです。

天引き延長可能

 ところが、自治体が、天引き手続きを急ぐ必要はまったくないことが、十九日に小池議員がおこなった厚労省への申し入れのなかで判明しました。

 厚労省の担当者が「市町村が判断するならば、特別徴収(年金からの天引き)の開始時期を半年間遅らせることができる。制度がそのようなしくみになっている」と明言したのです。十月に決めた政令でそのことを定めており、自治体からの問い合わせにも、半年延期は可能と回答してきたことを明らかにしました。

 これを決めるのは、条例などのように、議会にかける必要はなく、一月末までに、市区町村の首長が判断し、社会保険庁に通知すれば実施できます。

 厚労省は、十八日付で「延期」を容認する通知を全国の自治体に出しました。大阪社会保障推進協議会は、市町村にたいして、「六十五―七十四歳の保険料の年金天引きを半年間延期することを早期に決めるように」という申し入れ活動を始めています。吹田市など複数の自治体では、年金天引きの半年間延期を決めました。

 問題だらけの後期高齢者医療制度は中止・撤回こそが求められていますが、一方で、自治体などにたいし、障害者らに苦痛を与えない改善を迫ることも急務になっています。(宮沢 毅)


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