2007年12月19日(水)「しんぶん赤旗」

正社員化の扉こじ開ける

徳島・光洋シーリング

あきらめを労組が変えた


 「正社員になりたい」と偽装請負に立ち向かった青年たちが、ついに正社員化の扉をこじ開けました。トヨタ系の部品メーカー、光洋シーリングテクノ(徳島県藍住町)が、偽装請負で働かせてきた労働者のうち十四人を二十一日から正社員化することになりました。低賃金で不安定雇用に置かれていた労働者がみずから立ち上がり、労働組合に入って勝ち取った画期的な成果です。


 「仲間と一丸となって頑張ってきたことが実り、本当によかった」

 こう語るのは、正社員になる勤続五年の男性(27)。全員の正社員化ではないので複雑な気持ちでしたが、周囲から「悪いのは会社。喜んだらいい」といわれ、喜びがこみあげてきました。

 高卒後入った会社を一年で辞めてからは正社員の仕事がなく、製造現場を転々としていました。

 「簡単にクビにされ、ボーナスもない。でも、これが社会なんだ」とあきらめていた気持ちを変えさせたのが、労働組合をつくって偽装請負をやめさせ、正社員化を実現しようという動きでした。偽装請負をさせていた企業に直接雇用する義務があることを知り、正社員になりたいとの気持ちが強くなりました。

 男性ら約二十人がJMIU(全日本金属情報機器労組)に加入したのは二〇〇四年九月。違法に働かせ、正社員と同じ仕事をしても半分の二百万円しかない年収に、「なんやねん」との怒りが渦巻いていました。

解雇を撤回

 〇五年十二月に偽装請負を告発した直後、雇い止めを通告されたときはショックでした。離れていく組合員もいましたが、泣き寝入りはしたくない、抗議していこうと話しあい、とうとう解雇を撤回させました。

 運動の先頭に立ってきたのが、約七年半になる矢部浩史さん(42)。「人前で話すのは大の苦手」ながら、支援を訴え、休日返上で全国を回りました。請負会社から「おまえらが何をやっても世の中は変わらん」といわれ、「変わるんじゃない。ワシらが変えるんじゃ」と言い返しました。

 偽装請負が社会問題となるなか県も仲介に乗り出し、昨年八月、直接雇用と一定期間後の正社員化で合意。十月から五十三人を直接雇用の契約社員にさせました。

 しかし、契約社員になっても賃金は請負のときと変わらず、最長でも二年十一カ月で解雇される恐れがありました。県内の日亜化学では組合員が直接雇用から排除され、仕事まで取り上げられる逆流が起きていました。

 組合は、職場や地域に運動を広げてたたかいました。四月に二度、二十四時間のストライキを行い、新たに十六人が契約社員になりました。正社員化を求めて十月にもストライキ。「団結」のハチマキをしめ、工場見学などにきた来客らからも、「あれは何だ」とささやかれました。

 こうしたなか、偽装請負問題での労使交渉を拒んでいた会社は態度を変えざるをえなくなり、「この問題は労使で前向きに協議し、是正していく」と表明しました。

 日本共産党はこのたたかいを当初から支援し、国会議員団らが現地調査や厚生労働省に申し入れるなど偽装請負の是正を求め、国会質問で数度にわたって追及。偽装請負根絶の通達を出させるなど、労働者のたたかいと結んで政治を動かしてきました。

後につづけ

 光洋のたたかいが起点になり、正社員化を求めるたたかいが全国に広がっています。

 日亜化学の偽装請負を昨年十月に告発した男性(34)も、その一人。光洋の正社員化を組合員に伝えると、みんな驚き、「後に続こう」と口をそろえたと言います。直接雇用の合意を破った日亜化学に対して十七日、県労働委員会に救済命令を申し立てました。

 光洋で請負労働者全員を正社員化させるたたかいはこれからです。勤続八年の男性(27)は今回、不採用になりました。しかし、「声を上げなければ誰一人正社員になれなかった。おれも先か後かの違い。みんなで頑張れば必ず道は開ける」と力をこめます。

 今回、正社員になる男性(29)は、専門学校を卒業し県内の数十社に応募したものの内定は一つもなし。今回、初めて正社員になり、「光洋で働き続けたい」との願いをかなえました。「仲間と全国の支援の力があって、正社員になれました。でも、まだ通過点。全員が正社員になるまで頑張ります」(酒井慎太郎)



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