2007年12月17日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

「スピリチュアルブーム」のかげで

悪質商法が急増


 若者を中心とした、死後の世界や「生まれ変わり」を信じるなどという「スピリチュアルブーム」のかげで、悪質な商法が急増しています。占いや気学で「今なんとかしないと、とんでもないことになる」と不安をあおり、高額なアクセサリーや数珠などを売りつけたり、法外な「祈とう料」を請求する「開運商法」と呼ばれる手口です。「スピリチュアル」の向こう側にある、もうひとつの顔とは。(平井真帆)


オーラに問題が/あなたは転換期…

心を支配、金もうけの手段に

 2006年度、国民生活センターの消費者窓口に寄せられた「開運商法」に関する相談件数は過去最多の3千件を上回りました。

 事態を重くみた全国霊感商法対策弁護士連絡会は12月4日、初の「スピリチュアル・霊感被害110番(電話相談)」を実施しました。

 「実感として、潜在的な被害者がそうとう眠っているのは事実」、「ブームに便乗し、こころの支配、金もうけの手段にしている人たちがいる」、「何とかしなければという危機感がある」。事前の記者会見で、同弁連事務局長の山口広弁護士らはそう語っていました。

 当日、寄せられた相談件数は59件。被害総額は実に1億3299万円にも上りました。なかにはひと家族で4千万円もの被害にあったケースもありました。

開運ペンダント

 電話をかけてきた20代の女性は、女性誌の広告を見て3万円ほどの「開運ペンダント」を申し込んだといいます。「2週間で効果がある」と書いてあったのに、効果がなかったので広告先にクレームの電話をかけました。すると「あなたの前世に問題がある。えらい先生に鑑定してもらうので写真を送ってください」と広告先。女性は携帯メールで自分の顔写真を送信。鑑定の結果、オーラに問題があるので25万円の数珠を買うよう薦められました。「3カ月間、様子を見るよう言われた。もうすぐその期限になるが、なんだかおかしな感じがする」と女性。

 同弁連の紀藤正樹弁護士は、「クレーム対応の仕方が、統一協会の霊感商法マニュアルに酷似している。悪徳商法、詐欺の疑いが高い。通常は街頭でのキャッチセールスや訪問販売に使われる手口が通信販売でも行われている」と分析します。

 電話相談を行った同弁連によると最近の特徴は、統一協会など特定の団体からの被害だけではないところ。街の個人占い師や気功師、小さな宗教団体のほかに、印鑑や仏具販売会社、自己啓発セミナーグループなどと称するさまざまな団体、個人による被害が全国各地で発生しているといいます。

年々増える被害

 国民生活センターに寄せられた開運商法に関する相談件数は、02年度は1839件で、被害金額ともいえる「契約・購入金額」は約9億4千万円。このうち20代からの相談は449件、30代からの相談は448件。20代、30代の若者だけで、相談全体の49%を占めていました。

 03年度1890件、04年度1955件、05年度2145件と増え続け、06年度は3057件、金額は約22億8千万円と、02年度の2倍以上に急増。相談件数における20代・30代の比率は29%になり、それ以外の年代にも被害が広がっている様子がうかがえます。

 同弁連の調べでは06年度、国民生活センターのほか、各地の消費者センターや弁護士に持ち込まれたものを合計すると、統一協会関連の被害(霊感商法被害)だけで40億円に達しています。

 人気占い師が出演するテレビ番組、「ズバリ言うわよ!」の放送開始は2004年の夏ごろ、人気「スピリチュアル・カウンセラー」が出演する「オーラの泉」の放送が始まったのは2005年4月。それと歩調を合わせるように相談・金額ともに急増しているようにも見てとれます。弁護士らもテレビや雑誌などメディアの直接、間接的な影響を心配しています。

 被害にあわないためにはどうしたらよいのでしょう。「運を開く、などという非科学的なことに大きなお金がかかることが、そもそも矛盾だ」。前出の紀藤弁護士は言います。「祈ること」にお金はかからないはず。「『運勢』などに多額のお金がかかることを、疑ってかかるべきです」


 全国霊感商法対策弁護士連絡会や国民生活センターに寄せられた相談事例

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 娘が友人に誘われて「ヒーリングサロン」に行った。背後には宗教団体があるようだ。先祖供養などとして既に400万円つぎ込んでいるうえ、友人たちにサロン紹介の手紙を出している。

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 新聞の折り込みに「鑑定チラシ」が入っており、「鑑定3千円のみ」と書いてあった。しかし、1日1800円で年間62万円かかると言われ、そのうち6万円支払った。消費者センターに電話をしてもらい「返金する」とのことだったが、「やはり返さない」と言ってきた。

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 ネットのアンケートに答えたら、お礼として姓名判断の鑑定が送られてきた。その2〜3日後、電話がかかってきて「あなたは今、転換期にいる。めったに見てもらえない偉い先生が特別に鑑定したいと言っている」と言われ、つい行ってしまった。そこで占いの後、開運のための印鑑をすすめられ、12万円で購入した。その印鑑に20日間、念を込めると言われ、まだ届いていない。

グラフ

お悩みHunter

田舎に帰っての就職 安易な選択ですか?

  就職活動中ですが、どんな業界がいいのか、なかなか決まりません。両親からは、「東京で暮らすのは大変だから、田舎に帰ってきたら」と言われています。実家にもどれば、経済的には楽だと思うんですが、就職先は限られるし、安易な選択ではないか、という気もするのです。(22歳、女性、東京都)

したい働き方考えてみよう

  びっくりしました。私の大学の3年生たちと、つい先日、同じ迷いを話し合ったばかりだからです。「女性は厳しいですね」と男子学生もしみじみと感想をもらしました。

 ここでの問題は、やはりどんなキャリアライフをイメージしているのかです。東京か田舎かは考えずに、自分はどんな働き方をしたいのかじっくり考えてみましょう。そして、何を自己実現したいのか―そのためには、どんな職種が適しているのかをまず考えてみることです。

 それらに漫然と取り組むのではなくて、3年生ですから、就活を進めながら煮つめる方がいいと思います。

 確かに田舎では、就職先も限られることが予想されます。かといって、現在の学生の身分での東京の一人暮らしと、社会人、それも民間企業に勤めながらのそれとでは、生活スタイルもその厳しさも一変することでしょう。残業続きで、一人暮らしのマンションに深夜に帰宅。ベッドに倒れこむように眠る毎日では、肝心の自己実現も吹き飛んでしまう危険さえあります。田舎のご両親の心配やアドバイスに、かなり説得力があることも確かです。

 今、あわてて決めるのではなく、ここはじっくり腰をすえ、東京と田舎の両方を就活対象にとらえてはいかがでしょう。これぞ、と思える仕事に出会え、労働条件が合えば、おのずから決定できるように思えます。


教育評論家 尾木 直樹さん

 法政大学キャリアデザイン学部教授。中高22年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。


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