2007年12月15日(土)「しんぶん赤旗」

沖縄新基地の環境評価方法書

再提出を要求へ

審査会答申素案


 沖縄県名護市辺野古の新基地建設にかかわる環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉球大学名誉教授)が十四日、宜野湾市で開かれ、環境影響評価(アセスメント)方法書について、「方法書で示された項目、手法が適切なものであるか否かを判断できる内容が十分示されていない」として、防衛省に再提出を求める答申素案をまとめました。

 冒頭、宮城邦治副会長(沖縄国際大学教授)は、十二日に開かれた普天間飛行場の移設措置協議会において防衛省が提示した代替施設の建設計画が詳細にわたっていることに触れ、「方法書や審査会で触れられていない内容が協議で明らかになっているが、一体どういうことなのか」と沖縄防衛局を批判。防衛局側も「我々としても方法書に具体的な事業内容が十分記載されているとはいえないという認識だ」と方法書の不備を認める発言をしました。

 各委員から「時期が熟していない段階で(方法書が)出されたというのであれば、方法書の差し戻しをするしかない」「審査会の総意として方法書のやり直しを強く要求して良いのでは」などの発言が相次ぎました。

 津嘉山会長は「方法書のやり直しを求める意見が多数のため、(審査会の総意として)防衛省に再提出を求める答申をとりまとめ、週明けに知事に提出する」とのべました。

 仲井真知事はこれを踏まえた「知事意見」を二十一日までに防衛省に提出します。


解説

沖縄の学者の良心示す

 沖縄県環境影響評価審査会を傍聴した名護市のヘリ基地建設反対協議会の大西照雄代表委員は、答申案について「沖縄の学者の良心の結晶だ」と高く評価。「私たちがこの間、ずっとたたかってきたことが答申案に盛り込まれ非常に画期的なことだ。第一の関門に風穴を開けたという感がある」とのべました。

 一九九五年の米海兵隊員による少女暴行事件への県民の怒りをきっかけに、日米政府が海兵隊普天間基地の返還、名護市辺野古への新基地建設を打ち出して十一年が経過。この間、海上ヘリポート計画が市民投票で否定され、両政府は「軍民共用空港」「L字形沿岸案」「二本の滑走路によるV字形」と四回も合意しながら、実際の着工はできずにきました。

 環境アセスについて、政府は日米合意である「二〇一四年完成」に間に合わせるため、環境アセス法違反の手口で切りぬけようとしました。

 政府の「アセス方法書」には、日米合意されている大型艦船の着岸を想定した岸壁や、航空機への弾薬搭載場所をはじめ、新基地に配属される航空機の機種・機数、飛行回数など新基地が稼働した場合の環境影響を測る上で欠かせない項目が記載されていません。

 建設作業ヤードの予定海域には、アオサンゴの群落が新たに確認されていますが、同方法書には記載されていません。

 新基地を容認する沖縄県や名護市も「意見書」で、記載するよう求めている点です。

 審査会は、防衛省に追加を求めてきましたが、同省は「準備書面で対応したい」と先送りの姿勢。審査会では、同省の姿勢を厳しく批判する声が相次ぎました。

 方法書の作り直しは事実上の撤回であり、現況調査の中止は、環境アセスの中断を意味します。

 新基地建設に重大な障害となるだけでなく、新基地建設を「米軍再編はパッケージ」と位置付ける日米合意からすれば、グアム移転をはじめ座間、岩国など米軍再編への影響は避けられません。(山本眞直)



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