2007年11月30日(金)「しんぶん赤旗」

放送法改定

「報道の自由を侵害」

衆院委で塩川議員 処分規定削除求める


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(写真)質問する塩川鉄也議員=29日、衆院総務委

 通常国会に提出されていた放送法改定案の審議が二十九日、衆院総務委員会で始まりました。日本共産党の塩川鉄也議員が質問に立ち、放送局への公権力の介入を強める新たな行政処分を改定案に新設したことに対し、「報道と表現の自由を侵害する」として、同規定の削除を求めました。

 行政処分は、番組にねつ造が発覚した場合、総務相が放送局に再発防止計画の提出を求め、意見を付けて公表するとしています。今年一月に発覚した関西テレビの「あるある大事典」のねつ造問題を口実にして盛り込まれたものです。

 この運用にあたって増田寛也総務相が「(放送事業者)自らの判断を尊重し、運用を抑制的におこなう」としたのに対し、塩川議員は「その規定を条文に盛り込まないのは、なぜか」とただすと、「社会的要請も考えて、せばめる明文化はしない」(小笠原倫明局長)と答弁。大臣の判断で規定を発動することが明らかになりました。

 総務省が「BPO(放送倫理・番組向上機構)の対策が機能している場合は発動しない」と説明していることについても、塩川議員は「機能しているか判断するのも大臣。行政処分を発動する判断基準が大臣の考えに左右されかねない。きっぱり規定は削除すべきだ」と要求しました。

 塩川議員は「ねつ造問題の背景になっている放送業界の不当な下請けいじめの構造こそメスを入れるべきだ」として、下請取引適正化のためのガイドラインをつくるよう求めました。総務相は「公正取引委員会とも連携して適正に対処したい」と答えました。


解説

自律掲げる現行法の改悪

 言論・表現の自由、政府や権力からの自律は放送の生命線です。それを掲げた現行の放送法は、戦前のNHKが準国営放送の道をたどった反省から、主権者である国民の手に放送を取り戻すことを眼目にしています。

 今回、政府が主導して国会に提出した放送法改定案は、現行の放送法の精神を百八十度転換させようとするものです。

 改定案の柱は三つ。一つがNHK経営委員会の強化。二つ目が、「あるある大事典」のねつ造をきっかけにした行政処分、三つ目が民放に対する認定放送持株会社制度の導入です。

 改定案の趣旨には「NHKに係る事項を中心として放送制度を改正」とあり、NHK経営委員会が「NHKの経営に関する基本方針」をはじめ十九項目の職務を行うことを定めています。中には「番組基準、放送番組の編集に関する基本計画」など、表現の自由に直接かかわる事項も含まれています。

 持株会社制度は、言論の多様性を保障したマスメディア集中排除原則(総務省令)を大幅に緩和して、東京キー局の支配を強めようとするものです。

 NHKのETV番組への政治介入や制作費流用などの不祥事、「あるある大事典」でのねつ造問題と、視聴者の放送への不信が大きくなっているのも事実です。これらの問題は、「政治的に公平」「事実を曲げない」放送をすることを掲げた現行の放送法からの大きな逸脱こそが問われなければなりません。

 放送法改定案の三つの柱は、昨年の「通信・放送の在り方に関する政府・与党合意」の主張そのままです。そこには、公共放送としてのNHKの解体や民放を再編成する内容が記されています。

 民主主義社会の形成に及ぼす放送の役割を考えるとき、それに反する改定案を成立させるわけにはいきません。


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