2007年11月24日(土)「しんぶん赤旗」
EU新加盟国の苦境
ブルガリア・ルーマニアなど
浮上する財政危機
欧州連合(EU)に今年加盟したばかりのブルガリア、ルーマニアや加盟間近といわれるクロアチアなどで財政危機問題が浮上しています。
これらの国にはEUに加盟した安心感から外国からの投資が激増し、対外債務もうなぎのぼり。ここにきて米国発のサブプライムローン(低信用層向け高金利住宅ローン)のこげつきが発端となる信用不安の拡大や世界的なエネルギー、食料の値上げもひびいています。国際通貨基金(IMF)は南東欧各国が一九九七、九八年(アジア経済危機)当時のアジア各国よりも外国投資に強く依存しており、財政危機に陥る可能性があると警告しました。
ブルガリアとクロアチアは現在、対外債務が国内総生産(GDP)の80%を超えています。外国銀行などによる国営企業の買収が多く、二〇〇六年時点でブルガリアの国有企業資産の90%以上が民営化され、多くが外国資本に関係しました。IMFは「外国企業の母国での小さな変化で、信用供与が突然ストップするリスクに非常に弱い」と分析しています。
ブルガリアではここ数年こそ年6―7%のインフレ率ですが、九六年からの500%を超えるインフレで公務員給与は大幅に目減り。今年になって教師の全国ストなど労働争議が相次ぎました。
政府は教師に十一月から22・5%、来年一月からさらに24%の二段階の賃上げを回答しましたが、労組は物価高騰に比べればなお低いとしてストを続行しています。オレシャルスキ財務相は教師の要求は正当なものとしながらも、これ以上の賃上げは経済を揺るがすと拒否の姿勢です。
ルーマニアでは五年前にオーストリアの銀行に四千五百万ドルまで買いたたかれた国営銀行「カサ・アグリコラ」の資産評価額が二十五億ドルと約五十五倍になるなどの成功から、一気に外国からの投資が進みました。ここ数年のインフレ率は10%前後ですが、住宅ローンはこの一年間に約60%も伸びるブームで、借金による過熱経済です。
住宅ローンの半分は自国通貨レイではなくユーロ建て。外国債務が増加し経常収支赤字はGDPの約15%となっています。経済ブームの中、不透明な経済運営で汚職腐敗や組織犯罪がはびこっているとEUは指摘。経済の不透明さも危機を招きやすいとされます。
一方、〇四年のEU加盟諸国ではユーロ導入をめざし、財政赤字削減へ向け緊縮財政へかじを切っています。ハンガリーではジュルチャーニ首相が昨年来、増税と社会保障費削減・医療費や大学授業料の値上げなどの政策を相次いで打ち上げ、国民の怒りをかっています。(片岡正明)

