2007年11月23日(金)「しんぶん赤旗」

主張

温暖化対策

政治の力を発揮するとき


 世界の科学者が地球温暖化の原因や対策について話し合ってきた「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の総会がこのほど開かれ、第四次の評価報告書を発表しました。ここ二、三十年の努力がヤマになると指摘しています。

 報告書は十二月に開かれる気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)などでの論拠となります。今週開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議や東アジア・サミットでも、温暖化が焦点になりました。温暖化を抑えるために、いまこそ政治の力を発揮するときです。

取り戻せなくなる

 数年前までは、政治家や企業経営者などの間では、地球の温暖化そのものについても、人間活動が生み出す二酸化炭素(CO2)などが原因となっていることにも、疑問視する声が少なくありませんでした。もちろん科学者には知られていましたが、今回のIPCC報告書は、「気候変動の温暖化には疑う余地がない」「二十世紀半ば以降観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの大気中濃度の増加によってもたらされた可能性がかなり高い」と、強い調子で、地球の温暖化とその原因を指摘しています。

 地球の温度が上昇を始めたため、異常豪雨やかんばつなどの気候変動が激しくなり、生態系にも大きな影響が及んでいます。報告書は、今後も温室効果ガスの排出が続けば、二十一世紀にはさらに温暖化がすすみ、二十世紀に観測されたよりも大きな気候変動が引き起こされかねないとしています。しかもその変化は、海面の上昇や生物種の絶滅など、急激でもはや「後戻りのできない」大規模な影響をもたらしかねないと、きびしく警告しています。

 温暖化によって、今世紀中に気温は最大六・四度上がり、海面は十八―五十九センチも上昇、北極やサハラ砂漠以南のアフリカ、小さな島やアジアのデルタ地帯などが大きな影響を受けます。アジアでは穀物の生産量が減り、飢餓が広がる可能性があるというのですから被害は甚大です。

 もちろん、現在起きている温暖化は、人為的な温室効果ガスの排出が原因ですから、排出を減らせば徐々にでも温暖化を抑えることができるはずです。報告書は、「今後二十年から三十年の緩和努力とそのための投資が、より低い安定化濃度の達成に大きな影響を与えるだろう」とのべ、「排出の削減が遅れると…よりきびしい気候変化の影響のリスクを増大させる」としています。

 報告書の試算によれば、今世紀末の気温の上昇を二・〇度から二・八度に抑える排出削減策をとった場合でも、今世紀半ばの世界の国内総生産(GDP)の成長率の低下は、平均0・12%以下にとどまるとしており、温室効果ガスの排出量削減は決して不可能な数字ではありません。

先進国と企業の責任

 温室効果ガスの排出抑制は、地球全体の課題ですが、とりわけ重い責任を負っているのは、先進工業国と産業・企業です。世界の人口では二割にすぎない先進国は温室効果ガスの排出では六割を占めます。しかも大半が産業用やエネルギー用です。

 一九九七年に京都で開かれた気候変動枠組み条約の締約国会議(COP3)は、「京都議定書」でまず先進国が二〇〇八年から一二年までに排出量を6%削減するときめました。削減どころかその後も排出量が増えている日本政府の責任は、いよいよ重大です。



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