2007年11月19日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

障害者がいきいきワーク

行政もバックアップ


 障害者の働く場、小規模作業所を、行政が支援している兵庫県明石市、静岡県富士市の例を紹介します。


市役所内に作業所

公用車洗車や印刷受注

兵庫・明石

地図

 兵庫県明石市(あかしし)の市役所内に作業所「時のわらし」が九月、開設され、市役所からでる、印刷や封筒詰め、公用車の洗車などの仕事を請け負っています。また、市役所ロビーに八日、福祉コンビニが開店。障害者が就労し作業所で作った品物も販売しています。

親の願い受け

 日本共産党議員団は、障害児を持つ親の「子どもより一日だけ長生きしたい」「働ける場所が欲しい」という声を議会で紹介し、学校を卒業した後の居場所づくりに、市が責任を持つよう何度も取り上げてきました。現在、市内外で、六百人近くの人が事業所などに通所し、相談があればすぐ紹介のできるネットワークシステムもできています。

 昨年九月議会に、NPO法人「明石障がい者地域生活ケアネットワーク」から「障害者自立支援法における独自政策と見直しを求める」請願が出されました。全会派一致で採択され、(1)所得保障を確立すること(2)障害区分程度の根本的な見直し―を求める意見書を国に提出しました。市はこれを受け、就労支援のあり方を研究。市役所内に小規模作業所と福祉コンビニの開設を発表しました。

 作業所「時のわらし」は、市が、明石障がい者地域生活ケアネットワークに運営を委託し、さまざまな障害を持つ人が一緒に働いています。就労希望者の公募に二十人が応募し、五人が採用されました。午前九時から午後四時勤務、二年間の期限付きで、一般企業への就労をめざします。福祉コンビニは、一般の商品のほかに障害者団体の商品も販売し、販路の拡大と増収を目指します。

 障害者の求人は、ハローワークを通じて行われ、一定期間職場に付き添って仕事の自立を助けるジョブコーチの支援が受けられます。

 障害福祉課長は、「開設は終わりではなく始まりで、どんどん課題がでてくる。市役所から作業所の仕事をどれだけ出せるか。障害を持っていてもコンビニで働ける。配慮と工夫があればどこでも仕事ができることを発信したい」と、力説しました。

 「時のわらし」で働く五人を訪ねました。訪問した当日は、市役所の車の洗車と「児童虐待防止キャンペーン」のリボンの作製です。仕事はどうですか?と聞くと「楽しい」と口をそろえての返事が。「いろいろな仕事ができて、一日が早く過ぎる」「今までよりウント時給が多いのでうれしい」。職員は「仕事は丁寧で速い」と話します。

補助金増額を

 五十人近くが登録利用する地域活動支援センターを訪ねました。センターの施設長は、「事業費補助が前年より百万円増額されたが、職員を一人増やすと消えてしまう。利用日数が確定しないので、毎月の財政状況が不安。質の高いケアを維持するため補助金を増額してほしい」。

 また、ある入所施設では、「定率一割負担だけでなく、食費や日用品代が自己負担になった影響が大きい。施設で一緒に暮らしている仲間が、経済的理由で行事などに参加できない。応益負担そのものを中止すべきだ。現場職員も生活ができない低賃金があたり前になっている。これでは専門的知識や経験が途絶えることになる。サービスを提供すれば赤字になる報酬単価では、事業はやっていけない」と自立支援法への怒りをぶつけました。(つばきの利恵市議)


ロビーにショップ

味自慢のクッキーや総菜

静岡・富士

地図

 静岡県富士(ふじ)市役所二階ロビーに市内十二の障害者就労支援事業所を利用する障害者の自主製品販売店「あいあい」が五月からオープンしました。

 学校給食の廃油を利用したせっけん、味自慢のクッキー、手づくりのお総菜、肉厚の生シイタケ、行列もできるパンなど心のこもった品々が市役所に来た人の足を止め、ホットなふれあいの場になっています。

やりがい実感

 「あいあい」は各事業所が曜日ごと持ち回りで対面販売するほか、無人販売、カタログ販売も。

 対面販売の月曜当番である「笑居笑居(わいわい)」(自立訓練と就労支援の事業所)の斉藤恵美子さんと安藤義男さんは職員とともに樹脂粘土製のえとの置物やヒノキのブロック入浴剤を販売。「みんなでつくったものが売れてお金をもらえるのがうれしい」と話します。

 自主製品の販路拡大と市役所への出店は、各事業所のかねてからの共通する願いで同市に繰り返し要望する中で市が場所を提供し実現しました。

 富士市授産製品販売促進協議会の高橋愛子会長は「出店により品物が確実に売れています。職員も、お情けで買ってもらう品物ではなく、だれがみてもすばらしいと思えるものをつくろうと材料や流行などいろんな勉強もするようになりました」と言います。

 障害者の収入は一万円前後の工賃と障害年金が頼り。障害者自立支援法による「応益負担」導入で工賃を上回る利用者負担が強いられ、サービス利用を控えたり、事業所の運営にも大きな影響を与えています。

 こうした中、富士市は今年度、(1)工賃アップ(2)企業就労の推進(3)就労支援ネットワーク強化―をすすめる「富士市就労機能パワーアップ事業」を独自に立ち上げました。同事業の委託を受けた就労機能パワーアップ事業部(NPO法人富士市手をつなぐ育成会内)が異業種の団体に出向いて障害者の就労支援を訴え、商工会議所や中小企業家同友会、ハローワークなどと連携を強めています。

企業も協力し

 ネットワークでつながった団体・個人からは障害者の就労・実習先や仕事の紹介をはじめ、製品の廃油せっけんを切り分けるカッター器、パン生地へのあん注入機など作業用具を会社社長が考案・開発してくれるなど貴重な協力を得ています。

 同事業部は「あいあい」の各事業所職員、社協、市障害福祉課を集めた会議を開き、情報提供や活動を報告し、障害者の就労や製品開発・販路拡大にいかしています。

 同事業部主任コーディネーターの芦澤晴己さんは「大きなエリアの中で企業も巻き込んで障害者の就労を支援する循環型のシステムが必要。そうすれば企業も、社会も、施設も、本人も幸せになれる。そのために一般社会の理解を広げたい」と決意を語ります。(静岡県・森大介)


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