2007年11月14日(水)「しんぶん赤旗」

新テロ法案

和平努力と両立しない


 十三日の衆院本会議で、自民、公明の与党が賛成多数で可決し、衆院を通過させた新テロ特措法案―。海上自衛隊をインド洋へ再派兵させるものです。しかし、これまでの短い国会審議で浮かび上がってきたのは、米主導の「対テロ報復戦争」への支援と、アフガニスタンの和平努力は両立できないということです。


アフガン 泥沼化、米は増派も

 アフガニスタン南部のヘルマンドで十一日、米軍主導の多国籍軍が反政府武装勢力の住居を攻撃し、武装勢力十五人とともに女性と子ども二人を殺害。アフガン北部で七日、自爆攻撃により五十二人が死亡し、二〇〇一年の米軍主導の「対テロ報復戦争」開始後、単一の事件としては最悪の犠牲者をもたらす…。

 〇一年から〇四年までは五件しかなかった自爆テロが今年八月末までですでに百三件起きるなど、アフガンの治安は急速に悪化し、部分的な前進も押しつぶす勢いです。国連安全保障局の八月の報告は、「大部分の分析者はアフガンの治安情勢が二〇〇七年に一路悪化したと評価している」と述べています。

悪循環加速

 状況悪化を懸念する米国は、ますます武力に依存して局面を打開しようとしています。米軍部隊を増強する一方、アフガンに派兵している北大西洋条約機構(NATO)諸国にいっそうの増派を要請。コソボ駐留の千四百人の米軍部隊のアフガン派遣も検討しています。それが軍事攻撃とテロの悪循環をさらに加速させることは明らかです。

海自給油 報復戦争への加担

 政府は当初、同法案で支援する対象について、テロリストなどの拡散を海上で防ぐ「海上阻止活動」に従事する米軍などの艦船に限ると説明し、“米国の戦争への支援”との印象を薄めようと躍起でした。

 しかし日本共産党が国会審議で明らかにしたように、米軍は、海上阻止活動と、対イラク作戦、対アフガニスタン作戦を一体で遂行しているのが実態です。

政府認める

 日本共産党の小池晃議員の追及に石破茂防衛相は、艦載機がアフガン空爆を実施していた米強襲揚陸艦イオウジマに対して、海自が給油していた事実を認めました。(語録(1))

 さらに赤嶺政賢議員が、イラク戦争のような大規模空爆を行っている艦船に対して、新法案でも給油できるのかとただしたのに対し、町村信孝官房長官は、支援対象艦が海上阻止活動の任務を持っていれば可能だとの見解を示しました。(語録(2))

 新法案で可能となるのは、アフガン空爆を含む報復戦争への加担そのものです。

テロ根絶 米軍の作戦が障害に

 米軍主導の「対テロ報復戦争」は、罪のない多くのアフガン民衆を殺害し、新たな憎しみをよびおこしています。この報復の連鎖が、情勢のいっそうの泥沼化をもたらしています。

 当初、アフガンの情勢悪化を認めようとしなかった政府も、度重なる共産党国会議員団の追及に、自爆攻撃が急増するなどの事態悪化を認めるようになりました。(語録(3))

 いまアフガンで模索されているのは、武装勢力との政治的交渉を通じた和平の動きです。

 アフガンのカルザイ政権は、タリバンなどの武装勢力掃討作戦の道から、テロリストでないタリバンとも接触し、政治的解決を目指す「平和と和解のプロセス」に切り替える方針を打ち出しています。和平に向けたプロセスの基盤を掘り崩しているのが、報復戦争です。

専門家証言

 アフガン駐留英軍の司令官を務めたジョク・スターラップ英参謀総長も「アフガン問題や世界中の問題を軍事的に解決できるとの誤解が広がっているが、誤った認識だ」「全体的にみれば、これらの問題は政治的にのみ解決できる」と発言しています(十月二十五日放映のインタビュー)。

 衆院の参考人質疑でも、戦争が事態悪化をもたらしていることへの懸念の声が専門家からあがりました。(語録(4))

 日本共産党国会議員団の追及に政府も、アフガンで進む和平の動きについて「重要だ」(福田首相、十月三十日)と表明。和平の障害となっている事態悪化の要因に、米軍などの掃討作戦があることも認めざるをえなくなりました。(語録(5))

 日本共産党の笠井亮議員は、政府のこうした言明と、一般市民をも殺害する報復戦争は「相いれない」と追及。福田首相は「不幸にして一般の方が巻き込まれることはある。そのことを否定するつもりはない」と開き直ることしかできませんでした。(十二日の衆院テロ特別委)


語録

 (1)石破茂防衛相 海上自衛隊の補給艦「ましゅう」は、2006年9月4日、22日に、「イオウジマ」に燃料補給を実施した。米海軍ホームページを見ると、(搭載されていた艦載機の)ハリアーは136回の任務飛行をアフガニスタン上空で遂行したと記録がある(10月16日の参院予算委)

 (2)町村信孝官房長官 (補給相手の艦船が)それ(海上阻止活動)以外の目的を同時にやっていたとしても問題がない(10月31日の衆院テロ特別委)

 (3)高村正彦外相 (アフガンの)治安情勢は非常に深刻。自爆テロ件数は、国連の報告書によれば、02年ゼロ件、03年2件、04年3件、05年17件、06年123件、07年8月末で103件となっている(11月8日の衆院テロ特別委)

 (4)アフガン出身で医療法人理事長のレシャード・カレッド氏 現地の需要も考えずに、先の見えない軍事援助は、再びアフガンが政治のおもちゃになることを意味し、アフガン国民の立場としては、迷惑な話だ(11月5日の衆院テロ特別委)

 日本政府代表としてアフガンで武装解除に取り組んだ経験を持つ伊勢崎賢治・東京外国語大学大学院教授 テロリストせん滅のためのピンポイント爆撃で、女子、子どもが巻き添えになっている。これがアフガン世論の反感を買っている。自衛隊のインド洋の活動を継続することは、日本の国益にはならない(同)

 (5)高村外相 (赤嶺氏が事態悪化の要因に米軍の作戦があると指摘したのに対し)一面の真理がある。耳を傾ける点もあると思う。だからこそ、カルザイ大統領も空爆について苦言を呈している点もある(11月8日の衆院テロ特別委)


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