2007年11月8日(木)「しんぶん赤旗」

薬害肝炎 初の和解勧告

大阪高裁 「当事者と面談する」


 汚染された血液製剤フィブリノゲンでC型肝炎に感染した患者らが国などを訴えた薬害C型肝炎大阪訴訟で、控訴審の口頭弁論が七日、大阪高裁で開かれ、横田勝年裁判長は原告と国、被告企業に和解を勧告しました。全国五カ所の裁判で、正式な和解勧告は初めてで、早期の全面解決に向けて、動き出しました。

 同裁判長は、前回九月の弁論で、原告からの和解要請を受けて和解の可能性を判断するための意向の確認を表明していました。国、企業側からも和解の座につくとの表明があり、「和解成立の可能性があると判断した」と説明。そのうえで、「十二月七日までに、裁判所としての和解骨子案を提示したい。当事者との面談の機会も持ちたい」と表明しました。

 裁判所の和解勧告の表明をうけて、大阪訴訟原告団の代表、桑田智子さん(47)は、「勧告を受けてほっとしました。予断は許さないと思いますが、裁判長は私たちの声を聞いて決めるということなので、私たちの望む和解案になると期待しています。国と企業の被害を拡大させた責任は重い。被害を認めて謝罪してほしい。早期に全面和解に応じて成立にこぎつけてほしい」と話しています。

 訴訟は二〇〇二年十月以降、東京、大阪、名古屋など五地裁でおこされ、仙台地裁を除く四地裁が国の責任を認定しています。


全面解決へ大きな一歩

原告団が会見

 和解勧告を受けて、大阪訴訟の原告団と弁護団が記者会見しました。弁護団事務局長の山西美明弁護士は、「全面解決に向けた大きな一歩」と評価しました。

 薬害肝炎全国原告団の山口美智子代表と薬害肝炎全国弁護団の鈴木利廣代表の声明を発表。「この間に全国で五人の原告が亡くなるなど、病状の進行による被害の拡大はいまなお続いています」と指摘。「国及び製薬企業は、本日の和解勧告を真摯(しんし)に受け止め、原告らに対し、すみやかに責任を認め謝罪すべきです」とのべ、早期の全面的な解決とともに三百五十万人のB・C型肝炎患者の治療費助成などの対策を求めています。


解説

今度こそ法的責任認め、実効ある薬害防止行政を

 薬害肝炎大阪訴訟で、大阪高裁(横田勝年裁判長)が七日、原告と被告の国と製薬企業に和解を勧告したことで、薬害肝炎問題は、早期全面解決へ大詰めを迎えました。被害者の命をかけたたたかいと世論が国と企業を追い詰めた結果です。

 横田裁判長は四月、国に和解を打診しました。しかし国は「立証を尽くしたい」と和解を受け入れませんでした。

 国を和解のテーブルに着かせる大きな転機となったのは、厚生労働省が四百十八人の薬害被害者リストを知らせずに放置していたことが発覚し、国民の怒りが沸騰したことからです。

 被害者との面談さえも拒否し続けてきた厚労相が「肝炎問題は十一月中には片付ける」と言わざるをえませんでした。

 リストとともにあった資料には一九八七年五月当時、薬害を合理化するために「理論武装の用意が必要と考える」と、製薬企業に示した厚生省の見解が書かれています。(1)血液製剤が使われた場合の患者の不利益は、やむを得ないと述べている文献を用意できるか(2)現在の学問レベルでは原因究明、予知は無理との文献はないか―などです。同省には被害者の健康・命を守る視点がありませんでした。

 厚労省の前には「薬害根絶の碑」があります。一九九九年八月二十四日、「薬害エイズ」事件の和解にあたって建立されました。「医薬品の安全性・有効性の確保に最善の努力を重ねていくことをここに銘記する」と書かれています。

 建立から一年後の薬害根絶デーのことでした。「われわれの深刻な被害の現実に口をつぐんだまま目を伏せることしかできなかったならば『誓いの碑』はただの石の塊だ」。薬害肝炎被害者がC型肝炎に感染させられた怒りを訴えました。

 国は、肝に銘じてほしい。今度こそ法的責任を認め真摯(しんし)に謝罪をして、実効性ある薬害防止の薬務行政に取り組むべきです。(菅野尚夫)


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