2007年10月30日(火)「しんぶん赤旗」

現行基準の数値見直し

原爆症検討会座長が指示


 原爆症認定基準の見直しを議論する厚生労働省の「原爆症認定の在り方に関する検討会」(座長・金沢一郎日本学術会議会長)の第三回会合が二十九日、東京都千代田区内で開かれました。

 金沢座長は、現行の「審査の方針」で被爆者の病気が原爆放射線によるものかどうかの基準となる「原因確率」について、「最新の知見に(数値を)見直すため」の作業を行うよう委員らに指示しました。傍聴した原爆症認定集団訴訟弁護団は「現行基準の手直しですますのではないか」との懸念を示しました。

 原因確率は、初期放射線による被ばく線量だけを問題にし、残留放射線による内部被ばくの影響を考慮していないため、遠距離被爆者や入市被爆者が切り捨てられています。

 会合では、前回までの議論を受けて論点を整理し、(1)被ばく線量(2)急性症状(3)放射線起因性・原因確率(4)その他―の四点を提示しました。

 被ばく線量の評価について報告した静間清委員(広島大学大学院教授)は、誘導放射能のベータ線による被ばくと、呼吸や飲食を通じて体内に放射性物質を取り込んだ内部被ばくを考慮すべきだとして、審査の基準に加えるよう求めました。

 これに対し、原因確率について報告した甲斐倫明委員(大分県立看護科学大学教授)は、「目安としての合理性がある」と現行制度を擁護。現在の数値には適切でない点があるとして、数値の見直しを提案しました。金沢座長は甲斐委員の提案を受け、甲斐委員と放射能影響研究所による見直し作業を指示しました。

 日本被団協や弁護団は会合後の記者会見で、「論点に関する私たちの要望が反映していない」(安原幸彦弁護士)と不満を表明。数値見直しについて内藤雅義弁護士は「数値だけでは決められない、という裁判所の指摘をまったく無視している」とのべました。



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