2007年10月27日(土)「しんぶん赤旗」
BSE全頭検査どう考える?
〈問い〉BSE(牛海綿状脳症)全頭検査について、税金のムダだという意見がありますが、どう考えますか?(茨城・一読者)
〈答え〉厚生労働省は、来年の7月末まで実施されるBSE全頭検査のための補助金を来年8月以降打ち切ることを決めました。これに対して、全国の関係自治体や消費者団体、農業団体から全頭検査体制を維持するため、補助金の継続を求める声が広がっています。
これまでの経過を見てみましょう。食品安全委員会は、2005年5月に、プリオン専門調査会の「中間取りまとめ」で「20カ月齢以下のBSE感染牛を確認することが出来なかったことは、今後の我が国のBSE対策を検討する上で十分考慮に入れるべき事実である」としたことを受けて、検査対象牛を21カ月齢以上にしても問題ないとの答申を出しました。
しかし、この答申は、米国産牛肉の輸入を進めるために、全頭検査を拒否している米国政府の要求を受け入れた結果ではないかと強い批判が出されました。
答申を受けて、厚生労働省は、05年8月から検査対象牛を21カ月齢以上としましたが、全国の自治体は、自主的に全頭検査を維持したのです。そして、全頭検査体制の維持を求める国民の強い声を受けて、政治的に全頭検査を継続している自治体に対する3年間の補助制度が決まったのです。
牛海綿状脳症(BSE)は、未解明な点が少なくない人類が初めて遭遇した新疾病です。それだけに、牛から人への感染を防止するためには、食用にする牛のBSEに感染しているかどうかの全頭検査が、有効であることは、プリオンを解明しノーベル賞を受賞したプルシナー教授だけでなく、国内の有力なプリオン研究者も主張しています。その有用性は、依然変わりません。
もちろん、全頭検査だけではなく、完全な危険部位の除去や脳にワイヤを差し込むピッシングの中止も重要です。それらを完全におこなって、私たちの食の安全・安心が、確保されるのです。
ピッシングについていえば、現在88%の牛肉がピッシング未実施の施設で生産されており、08年度末でピッシングを実施する施設はなくなる予定です。
全頭検査を税金のムダと声高に主張する論者もいますが、補助額は、総額で16億円にすぎません。検査キットの値下がりで、さらに必要額は下がる可能性があります。
全頭検査は、食の安全安心を支えるもので、国内の牛肉生産にとってもその振興となっています。全国の消費者の大多数が国産の牛肉の安全性を確信するまで継続すべきです。(小)
〔2007・10・27(土)〕

