2007年10月27日(土)「しんぶん赤旗」

温暖化と健康被害の証言

米政権介入

原稿半分削る


 【ワシントン=鎌塚由美】地球温暖化が健康に与える影響について米議会で証言しようとした米政府機関・疾病対策センター(CDC)所長の原稿が、ホワイトハウスの介入で大きく削られていたことが明らかになり、問題となっています。上院環境公共事業委員会のボクサー委員長(民主)は二十四日、ブッシュ大統領に書簡を送り、削除した数ページの公開を求めました。

 CDC所長のガーバーディング博士は二十三日に、上院環境公共事業委員会の「温暖化が人間の健康に与える影響」に関する公聴会に出席して証言しました。

 米メディアによると、証言前にホワイトハウスの点検に回された同所長の証言原稿のうち、「気候変動は公衆衛生の懸念」と「気候変動の脆弱(ぜいじゃく)性」に関する部分が削除され、十二ページの原稿が半分に削られたといいます。匿名のCDC高官が米メディアに、ホワイトハウスの「高圧的な」変更で原稿が「骨抜きにされた」と告発していました。

 ボクサー委員長は大統領への書簡で「国民は地球温暖化についての事実とその脅威が人間の家族や地域社会に与える影響を知る権利がある」と強調。「最終段階でCDC所長の証言から重要な科学的、健康に関する情報が削除されたことを深く懸念している」と述べ、ホワイトハウスに対し全面的な説明を要求しました。

 ホワイトハウスのペリノ報道官は二十四日、証言原稿の過程で「複数の政府機関が懸念を示した」のは、原稿の内容が国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告内容と一致していなかったからだと説明し、「内容が薄められたことはない」と疑惑を否定しました。

 ガーバーディング所長は二十四日、ホワイトハウスからの圧力を否定し、「議会での私の証言に満足している」と語り、原稿を離れての発言も自由だったと事態の沈静化に乗り出しました。

 点検前の原稿を入手した米メディアによると、所長は、温暖化が人間の健康被害に与える影響と疾病の可能性を詳細に記述していたといいます。「気候変動が公衆衛生に与える影響については、概して取り組まれていない。CDCは、気候変動は公衆衛生における深刻な懸念であると考える」との原稿の言葉は、所長の口頭発言でも一切述べられませんでした。



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