2007年10月25日(木)「しんぶん赤旗」

金大中事件

「政治決着」の前提崩れた

真相究明へ日本政府の責任果たせ


 韓国政府が、一九七三年に起きた金大中氏の拉致事件が当時の韓国中央情報部(KCIA)による組織的犯行だったことを公式に認めました。

 白昼、東京都心のホテルに滞在中の金大中氏が拉致された事件です。日本の警察の捜査で、犯行現場から当時の韓国大使館一等書記官でKCIAとみられた金東雲の指紋が発見されていました。

 事件直後から韓国の公権力=KCIAによる犯罪であることは明らかでした。

 にもかかわらず、日本政府がおこなったことは、KCIAの犯行を否定する韓国政府との間で七三年十一月(田中内閣)、七五年七月(三木内閣)の二度にわたる「政治決着」でした。捜査は継続するとしながら、KCIAの犯行を事実上、不問にしたのです。

 その韓国政府自身が、当時の李厚洛KCIA部長が指示しKCIAが組織的に実行した事件であることを公式に認めたのです。

 日本政府がしがみついてきた政治決着の前提が崩れ去りました。政治決着の見直しと真相究明は待ったなしの課題です。

 ところが、町村信孝官房長官は「早晩、韓国政府から態度表明があると思う」「日本は国際法、国内法にのっとって最大限努力した」と述べるにとどまっています。外国公権力による日本の主権侵害という政治的本質に照らすなら、あまりにも不誠実な対応というべきです。

 歴代自民党政権はこの問題が国会で追及されるたびに、「政治決着を見直すに足る新たな証拠が出ていない」「現在のところ公権力の介入を裏付ける新たな事実はない」といい続けてきました。「新しい問題が提起されるということになれば、その時点において事態をよく判断して適切な処置をとる」(七七年二月)と答弁したのは、当時の福田赳夫首相でした。

 文字通り「新しい」事態が提起されたのであり、日本政府の言い逃れはもはや許されません。

 しかも、問題の政治決着が、実は日本政府から働きかけたものだったという事実が、韓国政府が昨年発表した日韓政府高官会談議事録などで明らかになっています。

 それによると、七三年十一月の、田中首相と韓国首相とのいわゆる第一次政治決着のさい、田中首相は捜査を継続するがそれは「建前」であり、「日本側の捜査は終結する」「これでパー(終わり)にしよう」と表明したというのです。

 ここまで明らかにされながら、日本政府はなお、知らぬ存ぜぬでやり過ごそうというのか。

 直ちに政治決着の見直しに踏み切るとともに、事件の真相はもとより政治決着の経緯などについてみずから明らかにするべきです。これが金大中氏と日韓両国民にたいする日本政府の最低限の責任です。(近藤正男)


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