2007年10月17日(水)「しんぶん赤旗」
トルコ政府
クルド人拠点攻撃決定
イラク北部越境 国会承認求める
![]() |
【カイロ=松本眞志】トルコのエルドアン政権は十五日、同国軍のイラク北部への越境攻撃の承認を国会に求めることを閣議決定しました。国会は十七日にも採択する見込みです。トルコ南東部では、トルコからの分離独立をかかげるクルド労働者党(PKK)がイラク北部のクルド人自治区を拠点に、トルコ軍への軍事活動を活発化させています。PKKは七日にはイラクとの国境に近いシルナクでイラク軍部隊を襲撃し、兵士十五人が死亡する事件が起きました。
イラク北部では、石油利権の問題とも絡み、ブッシュ米政権とイラク政府がクルド人優遇策を推進して自治権を拡大してきました。これに対して、トルコ政府は将来のクルド人国家の出現を警戒し、今年一月には当時のギュル外相(現大統領)が軍事介入の可能性を示唆していました。
六月の米軍がクルド人自治区へ治安権限を移譲した後、PKKは同地区を拠点に活発に武装活動を展開しました。これに対してトルコ政府は米・イラク両政府の対応を非難し、イラク領内に散発的な砲撃を実施してきました。その後、イラク政府とのあいだでPKKの活動に共同で対処する合意を結びましたが、成果をあげることができず、トルコ側は軍の大規模部隊を国境に集結させたまま緊迫した状態が続いていました。
トルコ政府のチチェク報道官は、「テロの現実」を理由に今回の決定を正当化していますが、イラク政府はトルコ側に「忍耐」を求め、軍事的手段を回避するよう要求しました。米国や欧州連合(EU)もトルコ政府に対して解決に向けた外交努力と越境攻撃の自制を求めました。
今回の閣議決定を受けて、PKK側はトルコ軍がイラクに侵攻した場合、抵抗してたたかうとの構えを示しています。


