2007年10月14日(日)「しんぶん赤旗」

ハケン集う駅

追跡グッドウィルの日雇い (中)

「佐川」に行くと 別会社


 JR京葉線の二俣新町駅(千葉県市川市)。周辺は東京湾に面しており、大企業系列の倉庫が立ち並び、運送業者のトラックやクレーンが目立ちます。昼間は人影がほとんどない小さな駅ですが、早朝と夜の特定時刻だけ、派遣労働者の集合場所として、若者であふれかえります。

 「駅前の戸外のベンチで、野宿する若者も一日に二、三人はいます」(駅前のタクシー労働者の話)

●二重派遣だ

 七月、ある日の早朝、この駅前に集合し、大手派遣会社グッドウィルの日雇い派遣の労働をしたという都内の男性はいいます。

 「佐川急便の配送センターの倉庫作業だという説明を受けて、自宅を朝六時ごろに出発し、駅前に朝八時に集合して仕事をしました。しかし、佐川の人に連れていかれたところは、ハピネットという会社。これは二重派遣だと思いました」

 この派遣労働者がグッドウィルから受け取った「就業条件明示書兼労働条件通知書」には、「派遣先」の欄に「佐川グローバルロジスティクス」と「HP(ハピネット)」の二つの社名がありました。ハピネットは、玩具などの製造・販売をする大手企業(本社・東京都、東証一部上場)。

 仕事は、倉庫内で「ハピネット」という名前の入ったポロシャツを着た男性が指揮をし、約六十人の若い男女が働かされたといいます。

 「二重派遣」とは、派遣会社から、ある会社に派遣され、そこからさらに別の会社に派遣されて働かされるケース。派遣労働者に対する雇用主の責任をあいまいにし、二重の中間搾取(ピンハネ)で、賃金もいっそう引き下げられてしまいます。

 実際、今回の仕事では、一日の手取りが六千五百円程度(税引き後)。自己負担の交通費を差し引くと時給七百円にしかなりません。当時の東京都の地域別最低賃金七百十九円を下回ります。

 厚生労働省は「二重派遣は、労働者派遣法の想定する派遣とは違うので、職業安定法四四条が禁じる『労働者供給事業』にあたり、違法だ。経営者は行政指導を受け、従わない場合は、刑事罰として一年以下の懲役、または百万円以下の罰金になる」(需給調整事業課)といいます。

●会社認める

 それぞれの会社の担当者に問い合わせると、ハピネットは「佐川グローバルに業務を委託し、ハピネットのポロシャツを佐川グローバルの者に着せていた。佐川グローバルが雇った労働者に、ハピネットの倉庫で働いてもらっていた」(同社東日本ロジスティクスセンター責任者)といいます。

 一方、佐川グローバルロジスティクスは「最近までの六年間、派遣労働者を集めて、ハピネットの倉庫と資材で仕事をさせた。現在はやっていない。佐川グローバルが所有する資材は基本的に持ち込んでいなかった」(同社東日本センターの当時の責任者)といいます。

 二社の責任者は、ハピネットが佐川グローバルを経由し、グッドウィルの派遣労働者を使うという巧妙な「二重派遣」であったことを事実上、認めたことになります。

 グッドウィルの派遣労働者の男性が最近受け取った「就業条件明示書兼労働条件通知書」には、五種類の仕事のうち、「派遣先」の欄に二つ以上の社名があるのが三種類。「二重派遣」が横行していることがうかがわれます。(つづく)

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