2007年10月9日(火)「しんぶん赤旗」

底流 ほん流

派遣法 抜本改正が焦点


 労働者派遣法の見直しについて、労働政策審議会の労働力需給制度部会(厚生労働相の諮問機関)での審議が本格化しています。厚労省は年末をめどに報告書(建議)をまとめ、来年の通常国会への改正案の提出をめざしています。国民の運動で政治を動かす条件が大きく切り開かれた参院選後の情勢を受けて、抜本改正が焦点になっています。


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(写真)労働者派遣法の抜本改正を求めて開かれたシンポジウム=4日、国会内

 派遣労働は、働かせる企業が労働者の雇用に直接責任を持たない「間接雇用」です。戦前、賃金をピンハネし、劣悪な環境で働かせる「人入れ稼業」などが横行した反省から、戦後は、こうした労働者供給事業は禁止され、「直接雇用」が原則とされてきました。

 ところが、「雇用の流動化」と称して、正社員を減らして人件費の削減をねらう財界・大企業の要求にこたえて、一九八五年に労働者派遣法が制定され、間接雇用が導入されました。それでも派遣労働は「臨時的・一時的な場合に限定し、正規雇用の代替にしない」ことが原則とされました。

 しかし、規制緩和を求める財界の要求にこたえて、度重なる規制緩和が行われてきました。九九年には原則自由化、二〇〇四年には製造業にも解禁され、正社員の派遣社員への置き換えが大規模にすすみました。その結果、自動車や電機など名だたる大企業で派遣法違反の偽装請負が横行し、ワーキングプア(働く貧困層)を生みだすなど社会問題となっています。こうしたもとで、規制緩和に歯止めをかけ、派遣労働者を保護するために抜本的改正が焦点となっています。

臨時・限定が原則

 全労連や連合など労働側が求めているのは、「派遣は臨時的・一時的なものである」という派遣法の本来の原則に立ち返るとともに、派遣労働者の権利を守るように抜本改正することです。

 派遣先が決まったときだけ働く「登録型派遣」は、生活が不安定になるとして禁止。「日雇い派遣」も廃止します。

 派遣期間制限(現行三年)違反など違法派遣の場合、派遣先に直接雇用されているとみなす規定や、均等待遇など労働者保護の強化を盛り込むよう求めています。

 登録型はのべ百九十三万人おり派遣全体の75%を占めます。改正が実現すれば、直接雇用される労働者が増え派遣労働でも常用型として雇用されることにつながります。

 これに対し日本経団連のねらいは、派遣労働の「全面自由化」です。

 「請負法制に無理がある」(日本経団連・御手洗冨士夫会長)として、いっそうの規制緩和を主張。六月にまとめた要望書では、派遣期間制限に違反した場合の「直接雇用の申し込み義務」の廃止をはじめ、紹介予定派遣の上限(現行六カ月)の延長、事前面接の解禁などを主張。偽装請負にあたるとして禁止されている発注元企業による指揮命令を認めることなども求めています。

 無権利で低賃金の派遣労働を野放しにするもので、貧困と格差の解消を求める国民・労働者の願いに逆らっています。

登録型は禁止に

 九月から本格化した審議会の議論では、「登録型派遣」について労働側が、「雇用が不安定となり、技能も向上しない」として原則禁止を主張。これに対して使用者側は「ニーズがある」として継続を求めました。

 「日雇い派遣」については労働側は、雇用不安などの問題点をあげて廃止を検討するよう主張。使用者側は「規律の強化」という意味での検討には応じる考えを示しましたが、廃止には反対しています。

 違法派遣の場合、労働側は派遣先に雇用されているとみなす「みなし雇用」を主張しています。

 使用者側は「一定期間で契約を終わらせることになり、雇用が不安定になる」と反対。専門業務の常用型派遣については派遣先の有無にかかわらず雇用が確保されているとして、「申し込み義務」の撤廃を求めました。

 財界の身勝手な主張を許さず審議会の建議に抜本改正を盛り込ませるたたかいが求められます。

 福田首相は、国民世論に押されて、「若者が明日への希望を持てる」国づくりをめざすと表明し、「日雇い派遣」についても、「雇用が不安定でさまざまな問題がある」と認めざるをえません。さらに厚生労働省が、ハローワークでは「日雇い派遣」を紹介禁止とする通達を出すなど新たな変化が生まれています。

 労働組合などが開いた労働者派遣法の抜本改正をめざすシンポジウム(四日)でも、日本共産党など野党四党の議員が参加し、規制緩和の流れを見直すべきだとそろって主張しました。世論と運動が政治を動かしていることを示すものです。

 しかし、衆参の代表質門で日本共産党の志位和夫委員長、市田忠義書記局長が、派遣法の抜本改正を求めたのに対して、福田首相は「審議会の結果を踏まえ、適切に対処する」と答弁するにとどまっています。それだけに審議会に抜本改正を打ち出させることがいっそう重要になっています。

 参院選後の国会の新しい力関係を生かして、労働者派遣法の改悪を阻止し、抜本改正を実現する世論と運動を広げることが求められています。



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