2007年10月3日(水)「しんぶん赤旗」

口先だけですか? 石原都知事

公約・「反省」 次々棚上げ


 東京都の石原慎太郎知事は四月の知事選を前にして、「現行税制のゆがみを是正する」と、低所得者の住民税軽減を公約しましたが、一転してこれを撤回しました。「反省」を口にしていた豪華海外旅行も再開。都民から「選挙目当ての公約だったのか」と批判の声があがっています。(酒井暁史)

担当者に責任を転嫁

 「明々白々の公約違反だ」。九月二十六日の都議会本会議で、石原知事に減税公約の実行を迫る日本共産党の清水ひで子都議。石原知事は「(減税は)共産党の好きな一種のばらまきにつながるので政策転換した」とまでいって居直りました。

 石原知事は、低所得者の減税を発表した三月の記者会見で、「セーフティーネットが不十分な状況の中でゆがんだ税制を放置すると、社会の安定と活力が失われていく」「地方税制においてあるべき姿を示すものにした」と胸を張ったものです。

 ところが、九月七日の記者会見では「一律の減税という形は、逆に違う不公平も生じるおそれがある」とのべ、「公約を進化させていきたい」と強弁し、減税を撤回しました。税制のゆがみをただすとした自身の主張を否定したのです。

 公約違反ではないかという記者の質問に「何が違反ですか」と声を荒らげたあげく、「政策には試行錯誤がある。どういう経緯でこの案が見直され、これから先、どういうことを考えているかは、当事者に聞いてください」と担当者に責任を転嫁する始末です。その後も具体的な案はまだ示されていません。

 首都・東京でも貧困と格差が広がっています。

 厚生労働省の調査で、働いても住居も保障できずインターネットカフェや漫画喫茶で寝泊まりしている「ネットカフェ難民」が全国で五千四百人、東京で約二千人いるとされ、それが若者だけでなく五十代の人々にまで及んでいます。

 東京の医療関係団体の高齢者生活実態調査では、回答した約二千人のうち、四割近い人が月収十万円未満で、収入の低い人ほど健康状態がよくないという結果が示されました。

 石原知事は、三月の減税公約発表の際、「『構造改革』を推進してきた一方で、十年前に比べて生活保護受給者や非正規雇用者ともに非常に数が増えた」「都の増加率は全国を大幅に上回る状況になっている」と、低所得者の増加を認めました。そして、「収入が低い人に過重な負担を与えてはいけない」と、低所得者に配慮する姿勢をみせたのです。

 都知事選後も、都民の深刻な実態は何も変わっていません。「公約の進化」などというごまかしは通用しません。

 清水都議は厳しく指摘しました。「知事の公約が口先だけの、都民をあざむくものだったといわれても仕方ないではありませんか」

ツバル・フィジー旅行

 石原知事が態度を豹変(ひょうへん)させた問題は、住民税軽減の公約だけではありません。豪華海外出張も、選挙後、あっさり復活させました。

 「少しは反省してよね!」。石原知事の都知事選選挙ビラには、こんな文字が躍りました。豪華海外出張、四男の都事業への重用、税金を使った高級料亭での飲み食い…。日本共産党都議団や「しんぶん赤旗」の追及が火ぶたを切った、石原知事の「税金の無駄遣い」「都政私物化」の実態は、多くのマスコミで取り上げられ、都民の批判がわき上がっていたなかでの石原知事の「弁明」でした。

 石原知事は選挙中、豪華海外出張について「説明不足だった」「反省している」と低姿勢でした。「私自身の政治姿勢についても反省すべき点が多々あったことも事実です」と、知事選公約『東京再起動宣言』にも明記していました。

 しかし、石原知事は選挙後、「環境対策」の名で、ニューヨークに千六百万円、ツバル・フィジーに千五百万円もの税金を使って海外視察にでかけました。都民から「貴重な税金を湯水のように使われる知事の気持ちがわかりません」「外国にでかけるまえに都内の環境破壊を調べてもらいたい」など、疑問や批判がだされています。

 石原知事にとって「反省」も「公約」も、選挙で都民の支持を得るためのものにすぎなかったのでしょうか。


公約実行迫る

共産党

 日本共産党都議団は、知事の減税公約を「所得の低い人の税負担をひたすら強める国の税制のゆがみに一石を投じるもので、前向きな政策だ」と評価。同時に、所得の低い人への支援は、税の軽減と給付の両面で行うことが世界の常識であることを強調。減税公約撤回の取り下げと、来年度からの減税実施とともに、月1万円程度の緊急生活応援手当の創設や家賃補助の実施、最低賃金の時給1000円以上への引き上げ、社会保険加入などのワーキングプア(働く貧困層)対策を求めています。


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