2007年10月1日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

農民連が実りの秋 消費者へ届けます


 実りの秋を迎えて、各地の農民運動全国連合会(農民連)が消費者と交流をつよめ、安全・安心な農産物を届けてがんばっています。千葉県の多古町(たこまち)旬の味産直センターと福岡県うきは市の、みのう農民組合の活動を紹介します。


千葉・多古町旬の味産直センター

田んぼで親子が交流

地図

 台風一過の秋空の下、黄金色の田んぼに元気な子どもたちの歓声があがりました。さる九月八日、毎年の恒例となった神奈川県の新日本婦人の会の百二十人が、千葉県の多古町旬の味産直センターの市民農園「わたしの田んぼ」の収穫祭に訪れ、旬の味センターの交流施設「しんのみくうかん」で交流しました。四月に平和の思いを込めて自分たちで植えた「憲法九条田んぼ」の稲をかまで一株ずつ刈り取っていきます。

稲に感動した

 「四月に田植えした田んぼで大きく成長した稲に感動した」「思いっきり自分を出して、はずかしいほど心から子どもになりました」「いろいろな虫たちがいて、親子リズム(小組)の子どもたちも大喜びでした」「多古町の農家の方々の熱心な取り組みを聞き、食の安全への関心が深まりました」など、バスで参加した皆さんが多くの感想を寄せてくれました。

 旬の味センターの農家も、消費者との交流を大切な場と考えています。センターの椎名義光理事は「新婦人の皆さんと作った『わたしの田んぼ』も、会員さんと交流できる『しんのみくうかん』も、旬の味の二十年の歴史の中で生み出した貴重な財産です」といいます。

家族農業支え

 市民農園「わたしの田んぼ」が誕生したのは、一九九四年です。その前年、日本列島は未曽有の冷夏に見舞われ、コメが大凶作に陥りました。新婦人の方から、「おコメも産直で安心して利用したい」という声があがり、現在の市民農園ができました。この「わたしの田んぼ」コメ産直は、新婦人会員の家族の、健康的な食生活を支え、さらに農民連の家族農業を支える柱になってきました。

 いま、生産者米価引き下げ政策にさらされ、稲作農家の労賃は、時給にすると四百円にも満たないところまで下落しています。「わたしの田んぼ」が家族農業を支えているように、米価を下支えする価格保障制度を国や自治体が法制化していかないと、コメ農家はいなくなってしまう恐れがあります。

 「九条田んぼ」の稲刈りの後、農家が作った小麦で、多古町の地元に昔から伝わる「田舎まんじゅう」作りの体験や、竹林から取ってきた竹を素材に、「竹の紙すき」体験が行われ、多くの親子が楽しく取り組みました。

 多古町旬の味産直センターでは、このような機会を年間を通してつくり、組合員の営みとともに季刊誌『しんのみ畑』で紹介しています。

 センターではまた、二千五百軒の新婦人会員に「野菜ボックス」を届けています。百六十四人の組合員が約八十品目の農産物を生産していますが、そのボックスに入る野菜には、味と栄養価を追求した農家のこだわり食材が多く、たとえば、収穫量が少なくても昔ながらの香りと味がするニンジン「黒田五寸」などを提供しています。「多古町の野菜を使うと家族においしいといってもらえる。ホウレンソウやニンジンは多古町産が最高」などの消費者の声が寄せられるとうれしい限りです。

 農家と交流しながら、「食」「農」「自然」と触れ合えるのが、産直の魅力です。(多古町旬の味産直セ ンター生産販売課長 小林由紀夫)


福岡みのう農民組合

安全な大豆を食卓に

地図

 「天高く馬肥ゆる秋」の季節は、収穫がいろいろあり、農家にとって一番うれしい時期です。

 福岡県うきは市の耳納(水縄、みのう)山地周辺で精を出している福岡みのう農民組合は結成十一年目に入り、組合員五十人余がコメや野菜、梨、ブドウ、富有柿などの果物、植木を生産しながら消費者と交流しています。

 田植え交流会で子どもたちが泥んこになったり、赤ちゃんを抱っこしたお母さんたちが植えた稲の穂が今たわわに実っています。秋の収穫祭ではその稲刈りや、大豆畑の枝豆の収穫、生協との産地交流、ナシや柿狩りバスツアーなども行い、元気印で消費者と交流しています。

 とくに今、みのう農民組合がマスコミに注目されていることが二つあります。

国産を望む声

 一つは「大豆畑トラスト運動」です。十年ほど前に雨で田植え交流会が中止になったとき、二人の消費者から、「輸入大豆は遺伝子組み換えなどもあって危ない」「消費者が安心できる国産大豆は生産できないの」といわれたのが発端になり、いま七十アールの畑で生産しています。運動の参加者も九州内はもちろん、広島、神奈川からもあり、その熱心さに驚かされます。

 七月には、うきは市にある道の駅「うきは」で、百二十人が参加してみそづくりをしました。十八個のたらいを囲み大豆やこうじ、だしを混ぜて、「もっとこねて」「腰をいれて」と組合員の指導で、一時間半ほどで五百キロのみそをつくりました。参加者からは「みそづくりがこんなに大変だとは思わなかった。大事に食べたい」という声も聞かれました。

 こうした取り組みが、地元のRKBテレビや小郡市のケーブルテレビで放送され、十月一日からは福岡市中心街にあるイムズビル五階で一カ月間、西日本新聞社主催の「食卓の向こう側プラス」展が開かれ、大豆の枝豆や組合員の加工品である柿酢、はちみつなどが「みのう農民組合、大豆トラスト」コーナーで紹介、販売されています。遺伝子組み換えのない安全な大豆を求める消費者の声が大きく発展しています。

空豆が評判に

 もう一つが、NHK福岡放送が六月に生放送した「赤い空豆」です。組合員の一人が知り合いからもらった豆で、ご飯と一緒に炊いたらまるで赤飯、しかも赤飯より香りがいいと評判になりました。仲間たちにも生産をどんどん勧めたところ、いまでは年間五百キロの収穫量になりました。

 当日のNHK番組には私も出演し、リポーターから「このめずらしい赤い空豆を今後どうしていきたいですか」と問われたので、「組合として生産量を増やし、たくさんの方に赤い空豆と、夢を届けたい」と答えました。

 毎週利用者に届ける「野菜ボックス」には、野菜産直ニュースを入れ、各種イベントや野菜、果物の紹介から農政、食料問題まで掲載し楽しく読まれています。国が家族農業に冷たい中で、消費者との「食」の交流を大切にして、安心、安全の農産物を届けたい、「赤い空豆」に見られる夢をともに見つづけていきたいというのが、ホント夢です。(みのう農民組合書記長 佐々木督文)


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