2007年10月1日(月)「しんぶん赤旗」

主張

沖縄県民大会

「集団自決」検定を撤回せよ


 沖縄県の宜野湾市で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が十一万人もの県民の参加で開かれました。沖縄県知事をはじめ行政と県民が一体になった、燃え上がるような大集会となりました。

 参加者は高校教科書検定で政府が沖縄戦での「集団自決」が日本軍と無関係かのように書き換えさせたことに怒りの声をあげました。米兵による少女暴行事件に抗議して八万五千人が参加した一九九五年の県民総決起大会を上回る規模となったのは、「日本軍による強制」の記述を教科書から削除させた政府・文部科学省にたいする県民の怒りが頂点に達していることを示しています。

侵略戦争美化と一体

 大会決議は、今年三月の高校教科書検定で、文科省が沖縄戦の実態を「誤解する」といって、「日本軍による命令・強制・誘導」の表記を削除したことを糾弾しました。沖縄戦で戦闘による犠牲だけでなく、日本軍による住民虐殺、「集団自決」の強制という悲痛な体験をもつ県民が検定結果に猛反発するのは当然です。

 沖縄県議会と県下四十一市町村議会すべてがこの間意見書を採択し、検定結果を「歴史的事実を直視しない押し付け」と指弾し、検定撤回と「日本軍の強制による」との記述の復活を求めてきたにもかかわらず、安倍政権が拒絶した以上、県民から糾弾されるのは当たり前です。

 自国民を守るはずの日本軍が沖縄県民を死に追いやり、親子兄弟が殺しあう「集団自決」を強制したことは、侵略戦争の非人間的本質を端的に示す「代表例」であり、忘れてはならない歴史の事実です。

 「集団自決」は「日本軍による強制」という表現を削除したのは、日本軍が侵略した南京では「大虐殺はなかった」、「慰安婦」を「日本軍が強制した事実はない」といって侵略戦争と日本軍の行為を正当化する政府の策動と一体です。

 しかも「新しい教科書」の監修者と同じ研究グループで活動していた経歴をもつ教科書調査官を今回の検定作業にかかわらせました。侵略戦争を正当化する「靖国」派が主導したことはあきらかです。

 「集団自決」検定の撤回は、沖縄県民だけにとどまらず、全国民的な課題です。検定撤回を求める意見書を採択する地方議会も全国に広がってきており、こうしたとりくみを加速することが求められます。

 「公式の命令がない」から日本軍の強制はなかったという政府の言い分がそもそも通用しません。各地域に駐屯している日本軍の幹部が行事のたびに住民に、米兵に捕まる前に「玉砕すべし」と訓示していたことは、生存者の証言で明白です。

 体験者の証言は無視する一方で、当時の日本軍幹部の言い分だけを取り上げた検定は、「客観的な記述となるように指導をする」(八四年六月二十八日衆院内閣委員会 森喜朗文相=当時)との歴代文科省の約束にさえ反します。侵略戦争を正当化する「靖国」派のいいなりでなく、体験者の証言をこそ大事にすべきです。

受け継がなければ

 教師をめざす高校生は県民大会で、「あの醜い戦争を美化しないでほしい」と訴え、採択された県民アピールは「歪(ゆが)められた教科書は再び戦争と破壊へと向かう」とつよく警告しました。日本の将来を託すべき高校生に誤った歴史を教えることは、うそを教えて若者を戦争にかりだした戦前の誤りにつながりかねません。「集団自決」検定は撤回させるしか道はありません。


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