2007年9月25日(火)「しんぶん赤旗」

けいざい??

年金の財源

消費税を充当 なぜ問題?


 自民党総裁選挙でも、“年金財源に消費税を充てる”ことが話題になりました。どう考えればいいのでしょうか。


 低所得者ほど重い負担を強いられる逆進性をもつ消費税は、年金をはじめとする社会保障の財源としてもっともふさわしくない税金です。

 自民党総裁選では、基礎年金の国庫負担割合を三分の一から二分の一に引き上げるための財源(約二兆五千億円)として、消費税を充てるというやり方が議論になりました。

著しい逆分配

 無年金や低年金の高齢者にも負担が強要されるのが消費税です。このため、基礎年金財源に消費税を充てるというやり方は著しい逆分配を招くことになります。

 消費税は、“社会保障のため”といわれて導入されました。しかし、導入後、社会保障は相次いで改悪されてきました。“社会保障のため”というのが増税のための口実にすぎないことは、導入、増税の経過からも明らかです。

 財界は、企業の社会保険料負担を減らし、それを庶民の消費税負担に置き換えることを求めています。

 日本経団連は、奥田碩会長(トヨタ自動車会長=当時)時代の「奥田ビジョン」(二〇〇三年一月)の中で、公的年金の基礎年金部分の財源について「消費税を活用することが望ましい」と述べ、社会保険料については、「全額本人が負担する方法に改めることが考えられる」と提言しています。

 経済同友会は、今年四月の「社会保障改革」提言の中で、「新基礎年金の財源は、全額消費税で賄うが、一方で公的年金保険料はゼロにする」と主張しました。

 現行の厚生年金保険料は、労働者と企業で折半することになっています。財界は、企業の保険料負担をゼロにし、これを消費税に置き換えることで、企業負担を軽減することを求めているのです。

大企業は減税

 日本経団連は、法人実効税率を現行約40%から30%に引き下げることを求めています。御手洗冨士夫会長はこのための財源を問われ、「われわれのビジョンには、明確に書いてある」(二月二十六日の記者会見)と語り、二段階で消費税を10%程度に引き上げることを主張しています。

 財界の代表が、消費税増税が、大企業負担の軽減のためであることをあけすけに語っているのです。

 大企業が仕入れで支払った消費税は、消費者が支払った消費税から差し引かれてしまい、結局、大企業自身の負担になることはありません。

 “年金財源に消費税を充てる”という主張は、社会保険料や法人税などの大企業負担を軽減するための口実にすぎません。

ムダ見直しで

 日本共産党は、基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げるための財源として、公共事業費や軍事費など、ムダな歳出の見直しで確保した財源を充てることを主張しています。

 さらに、抜本的対策として、最低保障額月額五万円(当面)の「最低保障年金制度」を全額国庫負担で創設することを提案。その財源は公共事業や軍事費など歳出の徹底した見直しと、行き過ぎた大企業・大金持ち優遇税制を改めることで確保することを主張しています。


年金財源をめぐる発言

 ○…「(民主党の提案する)基礎年金を(全額)税方式でやることは、魅力ある」「民主党の意見に十分に耳を傾け、建設的な議論をしていきたい。財源についても率直にやっていただきたい」(津島雄二自民党税制調査会会長=14日、都内のシンポジウムでの発言)

 ○…「(基礎年金の国庫負担財源を2分の1に引き上げるについて)行政経費節減など工夫をするが、その額に及ばない場合は何らかの方法を考えるしかない。消費税(増税)を含めた手段を考えていくことは、当然必要になる」(福田康夫元官房長官=16日、共同記者会見での発言)

 ○…「基礎年金の部分に充てる等々の福祉目的税みたいな形で、消費税の値上げをしてもやむを得ない」(麻生太郎自民党幹事長=16日、共同記者会見での発言)

 ○…「例えば、基礎年金部分を税金で賄うのも1つの例だ」「社会保障の増加分の財源は消費税で補ったらいい」(御手洗冨士夫日本経団連会長=20日、記者会見での発言)



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp