2007年9月25日(火)「しんぶん赤旗」

主張

薬害C型肝炎訴訟

被害者の救済を最優先に


 薬害C型肝炎の被害者が五年前、国と三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)など製薬会社を相手取り、大阪、福岡、東京、名古屋、仙台の各地裁に訴えた集団訴訟の判決が出そろいました。原告らの願いは、すべてのウイルス性肝炎患者・感染者の全面救済です。とりわけ血液製剤によって感染した被害者への法的責任を認めて謝罪し、被害回復、再発防止策をとることです。判決は大阪以後、四連続して国と製薬会社を断罪しました。名古屋地裁判決(七月三十一日)は画期的(薬害肝炎全国原告団、同弁護団)で、すべての被害者救済への道を開きました。

全面解決へ協議を

 薬害肝炎は、出産や手術の際に汚染した血液製剤「フィブリノゲン」を止血剤として投与され、C型肝炎ウイルスに感染しました。血友病の治療薬の血液製剤(第九因子製剤)「クリスマシン」や「PPSB―ニチヤク」を止血剤として投与されて感染したケースもあります。

 ウイルス性肝炎はA型、B型、C型などいろいろな型がありますが、肝硬変や肝がんに進行する致死性の肝炎はC型とB型です。感染者の八割がC型肝炎で、全国で百五十万人以上、B型と合わせた感染者は三百万人を超えると推定されています。

 名古屋地裁の判決が画期的とされるのは、先の三つの地裁判決(大阪、福岡、東京)が国と製薬会社の責任が生じた時期を一九八〇年代になってからだとしたのにたいし、製造承認された七六年までさかのぼって投与された製剤の種類や時期を問わず国・企業の法的責任を認めたことです。また大阪、福岡の両地裁が請求を棄却した「クリスマシン」「PPSB―ニチヤク」についても国と製薬会社にたいして「安易に投与されないよう説明する義務」「感染の危険性など明確に表示する義務」を怠ったと賠償を命じました。

 この判決によって、投与した製剤の種類や時期を問わず、救済されるべき被害者の対象範囲が大きく広げられました。原告団と弁護団が求めているように、被告である国と製薬会社はただちに被害者に謝罪し、薬害肝炎問題の全面解決にむけた協議を開始すべきです。

 薬害C型肝炎訴訟の原告・弁護団は十七日に都内で開いた集会で、早期全面解決を要求しました。この集会で大阪訴訟原告の女性は、医療費が高額のために途中で治療を断念せざるを得なかった悔しさをにじませ、国の支援策を強く訴えました。一人あたりのインターフェロン治療薬の自己負担(三割)は八十万円にも及ぶからです。インターフェロン治療を必要とする患者は六十万人とされますが、その四割もの人が治療費の高額さから治療を断っています。

 肝炎ウイルスの感染は最近、かつておこなわれた予防接種の際の注射針の連続使用などによることも指摘されるようになりました。被告の国と製薬会社は、感染源の大きな原因の一つが医療行為だったという重大性、厚生行政の対応の遅れを重く受けとめるべきです。

急がれる治療支援

 国は仙台を除き四度にわたって敗訴したにもかかわらず、否を認めず、控訴して争っています。厚生労働大臣も原告らとの面会を拒否しています。国は解決を先延ばしせず、司法判断に従うべきです。治療が早いほど治療効果が高いことを考えれば、薬害肝炎問題の全面解決にむけ、まずウイルス性肝炎患者(C型、B型肝炎)への治療支援が急がれます。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp