2007年9月22日(土)「しんぶん赤旗」
主張
政治とカネ
「感覚マヒ」を改めるべきだ
安倍晋三首相の政権投げ出しの大きな要因の一つは「政治とカネ」の問題でした。それを受けての自民党総裁選だというのに、福田康夫元官房長官、麻生太郎幹事長の二候補に真剣な反省は見受けられません。
安倍内閣の閣僚らの疑惑続発で生じた国民の政治不信は、きわめて根深いものです。腐敗根絶へ、一から出直す姿勢が示せないようでは、政治への国民の信頼を取り戻すことなどできません。
民意にこたえないのか
総裁選後の新政権が、再開される国会でただちに直面するのも、国民が求める政治資金透明化の課題にどうこたえるかという問題です。
参院選惨敗直後、辞任した自民党の中川秀直前幹事長は「すべての政治団体に一円以上の領収書公開を求めるのが民意の大勢だ」とのべました。まったく当たり前のことです。
事務所費、光熱水費疑惑をはじめ、政治家がでたらめな政治資金の報告をしていたことに国民の怒りは集中しました。六月に自公両党が強行したような「ザル法」の政治資金規正法改定ではなく、一切の抜け道を許さぬ抜本的な対策をとることが、参院選で示された民意にたいする国会の最低限の責務です。
ところが、総裁選で福田、麻生両氏は「政治活動の自由があるからすべてを公開するのはどうか」と口をそろえ、一円からの領収書公開にすら反対しています。
「政治活動の自由」というのは自民党の決まり文句です。こんな理屈にもならない理由で透明化を拒むからよほど後ろ暗いのだとみられるのです。両氏はそんな自民党の根深い腐敗体質から一歩も出ていません。
政治家は自らの政治資金の実態を一点の曇りも無く国民に示さなければなりません。国民の「不断の監視と批判」(政治資金規正法)を仰ぐ真摯(しんし)な姿勢が必要だからです。監視の目をくぐりぬける虚偽報告は絶対に許されない国民への背信行為です。政治家が疑惑を招いた場合は、徹底した事実解明をし、厳しく責任を問わなければなりません。
自民党のやり方はその対極です。身内をかばって疑惑を隠し、責任をあいまいにし、違法・脱法行為に手を染める政治家があとをたちません。まさに「政治とカネ」への感覚マヒをきたしています。
自民党は「政治には金がかかる」といいますが、これはまやかしです。
福田、麻生両氏の資金管理団体の政治資金収支報告で目を引くのは、一年間で福田氏は四百万円、麻生氏は三千七百万円にものぼる巨額の飲食費の支出です。庶民には縁のない都心の高級ホテル、銀座や赤坂のクラブ、料亭で飲み食いを重ねて「なんの政治活動か」という国民の批判が起きるのも当然です。
こんな金をどこから得ているかといえば、党本部を通じて流れ込む税金分け取りの政党助成金、政治を金で買う企業・団体献金、形を変えた企業献金であるパーティー券収入です。両氏とも労せずして得た金でぬくぬく過ごす自民党型の典型です。
“二つの麻薬”にメスを
「政治とカネ」への感覚マヒの根源にあるのは、企業・団体献金、政党助成金です。政党・政治家が、広く国民と結びつく努力もせずに、やすやすと巨額の資金を得る仕組みが、国民の常識から遊離し、堕落した政治の温床となっています。
政治を腐らせる“二つの麻薬”にメスを入れず、金権腐敗の一掃はありません。いまこそこの課題に、政治は正面から向き合うべきです。