2007年9月19日(水)「しんぶん赤旗」

矢臼別演習場砂防ダム建設

防衛省が概算要求断念

「幻の魚」イトウ生息地

紙議員が再三要求


 防衛省は二〇〇八年度概算要求で、北海道の陸上自衛隊矢臼別演習場内を流れる風連川水系三郎川の六号砂防ダム建設費を盛り込まなかったことが、十八日までに分かりました。同水系は絶滅危惧(きぐ)種イトウの生息地であり、地元自然保護団体や日本共産党国会・地方議員団が砂防ダムの中止を求めていました。

 問題のダムは高さ約六メートル、幅三十三メートルで、工事用道路の建設が二〇〇六年度に着工されました。自然保護団体や専門家が既存ダム周辺で、イトウの産卵床があることを確認し、建設反対を訴えていました。ダム本体の工事着工は〇七年度の予定でしたが、昨年予算計上が見送られ、今回も要求が断念されました。

 「道東のイトウを守る会」の田中明子事務局長は「工事用道路も撤去して、自然環境を復元してもらいたい。風連川水系には、まだ十五基のダムがあります。イトウは絶滅の危機にあるので、今後も運動を強めたい」と話しています。

 イトウは本州ではすでに絶滅、北海道でも成熟したメス親は千匹程度と推定されており、「幻の魚」と呼ばれています。昨年五月、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで、もっとも生存が危ぶまれる「CR」(絶滅危惧種1A類)に登録されています。

 同演習場内の砂防ダム建設は、実弾射撃(現在も米海兵隊が演習中)による土砂流出を防ぐためとされていましたが、演習場内の別寒辺牛川(べかんべうしがわ)水系では、ダムを調査した検討委員会が土砂防止はダムでは止めにくく、植栽などが有効だと指摘。ダム二基の建設が中止になっていました。

 日本共産党の紙智子参院議員は、この問題で再三、政府に質問主意書を提出し、イトウの保全対策を求めていました。紙議員は「概算要求が見送られたことは一歩前進です。防衛省は砂防ダム建設を完全に断念し、既存ダムも撤去を含めて見直し、自然環境を元に戻すべきです。土砂の発生源である実弾演習は、ただちに中止すべきです」と語っています。


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