2007年9月17日(月)「しんぶん赤旗」
進む学習指導要領の見直し
学力テストで国が学校点検
点数ばかり追う危険
学校教育の編成基準となる学習指導要領の見直しが、中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)で進んでいます。同審議会の専門部会は八月下旬から九月にかけて、学習指導要領改定のために、十月にとりまとめる中間報告のたたき台として「検討素案」を示し、審議を重ねています。
今回の学習指導要領改定は、昨年、安倍自公政権が強行した教育基本法改悪を踏まえたものになります。同法改悪は、学校教育への国家統制をいっそう強めることを狙ったものです。
指導事項示す
佐貫浩・法政大学教授は「これまでも学習指導要領で教育の内容は示されていましたが、具体的な教育実践の方法やその成果をどう評価するかは、基本的に各学校、教師、親など、関係者にまかされ、教育行政が直接評価することはありませんでした。『検討素案』が打ち出した方向では、国家や教育行政が教育内容を示し達成度をたえず点検していくことになります。学力テストでいい点数をとることが学校教育の目的になってしまう危険性があります」といいます。
「検討素案」では、教科ごとに文科省が重要だと判断した教育内容について、「重点指導事項例」を提示するとしています。「重点指導事項例」には、学習指導要領が示す内容の中で重視すべき「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」にかかわる事項を例示するとしています。
そのうえで、子どもたちがそれを習得したかどうかを検証することが「極めて重要」だとしています。その検証の一環とされているのが、全国学力テスト(学力・学習状況調査)です。
同素案は、その検証システムとして、教育課程行政において「PDCAサイクルの確立が重要である」とのべています。
Pはプラン(目標・計画)、Dはドゥー(実施・実践)、Cはチェック(点検・評価)、Aはアクション(評価を踏まえた活動の改善)です。
文科省がPにあたるものとして、「学習指導要領改訂を踏まえた『重点指導事項例』」を提示し、各学校にそのための教育条件の整備や授業などに取り組ませ、Cの評価方法の重要なものとして位置付けているのが全国学力テストです。
ことし四月の全国学力テストをめぐっては、各地で、学力テスト対策と称して、子どもたちが楽しみにしている学校行事の時間を削って事前テストや補習が行われ、一部には不正行為も発覚しています。
過熱する競争
教育関係者からは、「検討素案」が打ち出した「PDCA」サイクルの導入で、各学校で学力テストに向けた点数競争が過熱し、学校教育をゆがめてしまうのではないか―と心配する声があがっています。
佐貫教授はいいます。
「教育実践では本来、日々子どもたちと向き合っている教師が、親と一緒になって、子どもが抱えている困難や教育的課題をつかみ、子どもたちが人間らしく生きるために、こんな力をつけさせたいという合意をつくって、取り組むことが重要です。検討素案が求める学校教育のもとでは、いまの子どもたちが直面しているいじめの問題や、生きづらさ、将来に希望が持てないといった問題をどう克服していくかという課題が切り捨てられてしまいかねません」
学習指導要領 学習指導要領は、各学校で編成する教育内容や授業時間などについて、文部科学省が基本的な編成基準を示すものです。中央教育審議会での審議と答申を受けて、文科相が告示します。
現在、同省は、教育基本法の改悪を受けた改定作業を急ピッチで進めています。今年度中に告示したい考えです。

