2007年9月15日(土)「しんぶん赤旗」

企業献金・政党助成金 依存高まる

2006年政治資金収支報告


開催団体は過去最多

全収入の1割占める

パーティー収入

 二〇〇六年の政治資金パーティーの収入は、総額百二十六億八千四百万円(前年比二億九千七百万円増)で、政治資金収支報告書を提出した政治団体の全収入の9・9%(前年比0・6ポイント増)を占めました。

 パーティーを開催した団体は四百十団体(前年比五十団体増)とデータのある一九九三年以降で過去最多。そのうち収入が一千万円以上の「特定パーティー」を開いた団体は二百七十二団体にのぼります。十四団体が収入一億円を超えています。

 「パーティー券の購入先は(企業や業界などの)団体」(自民党関係者)というように、一口二万円のパーティー券の購入は形を変えた企業・団体献金です。自民党の各派閥や民主党、有力政治家の重要な資金源になっています。

 自民党の九派閥の全収入に占める政治資金パーティー収入の割合は平均で54%。パーティー収入で上位を占める清和政策研究会(町村派)は52%、志帥会(伊吹派)は67%です。平成研究会(津島派)は一億円ヤミ献金を考慮し“自粛”していたパーティーを昨年二月に再開し、一億九千七百十三万円も売り上げ、全収入の34%を占めました。これらは、一夜にして数千万円から三億円近くかき集めたもの。「パーティーで集める派閥資金は、選挙対策と新人獲得の工作資金に使われる」(自民党関係者)といいます。

 民主党は、昨年五月に約四千人が参加した「民主党パーティー前進2006」で、一挙に二億四千八百九十五万円を集めました。連合加盟の労働組合や企業にパーティー券を売りさばいています。

 政治家個人では有力になるほど、大規模なパーティーを開き巨額の収入を得ています。二年連続でパーティー収入トップとなった自民党の中川秀直前幹事長の場合、資金管理団体「秀政会」が各地で「モーニングセミナー」「ナイトセミナー」「シンポジウム」などを十回以上開き、計三億五百七十八万円もの収入を得ました。パーティー券購入の大口は、日本医師連盟や全国不動産政治連盟など業界がつくる政治団体です。

 民主党の小沢一郎代表は九千十六万円を集めました。岡田克也副代表は九千五百五十一万円で、資金管理団体「岡田かつや後援会」全収入の91%をパーティー収入が占めています。

表

上位15社から1.9億円

軍事費の大幅増要求

軍需企業献金

 自衛隊の装備・弾薬・燃料などを受注している軍需企業が二〇〇六年に自民党に行った献金は、防衛省との契約額上位十五社(〇六年度)の合計で一億八千六百九十万円におよびます(別表)。この十五社の契約額の合計は九千七十六億円で、防衛省の総契約額の約69%にあたります。献金額や上位十五社の契約額はほぼ昨年並みで、全契約額の二割以上を占める三菱重工が献金額でもトップという傾向も変わりません。

 軍需企業側は軍事費の減少傾向に強い危機感を表明しており、「ミサイル防衛」(MD)や在日米軍再編経費の別枠化など、軍事費の大幅拡大を要求しています。

 今年八月には日米軍需企業の強い要求を受け、米国から提供された軍事情報の保護に関する「日米軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)が締結されました。

 軍需産業側は、すでに緩和された「武器輸出三原則」と併せて、兵器類の日米共同開発がいっそう促進されることを期待しています。

 さらに、自民・公明両党は六月、軍需企業の要求を受けて、宇宙の軍事利用を柱とする宇宙基本法案を提出しました。同法案では、軍需企業などの進出を促進するため「金融・税制上の措置を講じる」としています。

 一方、参院選での自公大敗という結果を受け、軍需企業が今後、政治献金などでどのような動きを取るのか注目されます。

表

06年総裁選

料理屋などへ支払い

麻生氏 選対設置で1100万円

 昨年九月の自民党総裁選を争った安倍晋三首相、麻生太郎幹事長、谷垣禎一元財務相の資金管理団体やそれぞれが所属する派閥の二○○六年政治資金収支報告書からは、総裁選絡みとみられる資金の動きが見えます。

 麻生氏の団体は総裁選が実施された九月に、選挙人名簿貸与料として二百四十二万円を党に支出。同月末には、陣営の選対本部を置いた都内のホテルに「選対設置・その他」として千百五万円を支払いました。また、会合や勉強会としてホテルや料理屋などへの支払いが多いのも特徴。月別に集計すると、出馬を正式に表明した八月、総裁選があった九月はいずれも四百万円を超えました。

 さらに、所属派閥以外の議員の政治団体や政党支部への支出を明記しているのは麻生氏だけ。四月に山口泰明氏(津島派)、五月に小此木八郎氏(無派閥)、六月に鍵田忠兵衛氏(当時無派閥)に、いずれも「会費」として五万円を支出。このうち、鍵田氏は総裁選で麻生氏の推薦人に名を連ねました。

 これに対し、安倍氏の団体の報告書には、同僚議員への支出や選挙(総裁選)対策と明記された費用は一切なし。ホテルや料理屋などへの支払いは、五月が五十五万円、総裁選で安倍氏支持の中核となった「再チャレンジ支援議連」が旗揚げした六月が百六万円、九月にはさらに増え百九十万円でした。選挙人名簿貸与料百九十七万円は、出身派閥の森派(当時)が支出しました。

 谷垣氏は○六年八月、個人として九千九百二十万円を谷垣派に貸し付けました。選挙人名簿貸与料百九十七万円を支出しました。


自民派閥収入

町村派 群抜く資金力

津島派 参院選控え2億円借金

 自民党各派閥の二○○六年の収入は、借入金を除くと、町村派が五億三千五百四万円で○五年に続きトップ。二位の津島派(三億七千五百三十六万円)、三位の伊吹派(三億一千百七十六万円)を大きく引き離しました。

 町村派の収入の内訳は、パーティー収入が二億八千七百十四万円、個人や政治団体の寄付が二億四千七百九十万円。同派では派閥幹部が資金を「上納」しており、昨年十月まで会長を務めた森喜朗元首相が最多の二千百二十万円。森氏から会長を引き継いだ町村信孝外相と清水嘉与子元環境庁長官が各千百二十万円、安倍晋三首相と中川秀直前幹事長が各千百万円を拠出していました。

 第二派閥の津島派は、○五年に衆院選の費用として銀行から借り入れた二億円を昨年三月に返済。しかし、十二月に再び二億円を借りました。同派事務所は「(今年七月の)参院選対策の費用」と説明しています。

 伊吹派は所属議員数で及ばない古賀派、山崎派を上回る収入を確保。このうち、パーティー収入が全体の三分の二を占める二億九百六十二万円で、会長の伊吹文明文部科学相が三千六十万円を寄付しました。

 このほか、山崎、古賀両派の収入は二億円台、高村、二階、谷垣各派は一億円台。昨年十二月に麻生派に継承された旧河野派は、六千百二十二万円でした。


各党の特徴

●自民党

 収入は、前年から六千八百四十六万円減り、二百六十一億六千八十二万円でした。

 自民党への企業・団体献金は、政治資金団体「国民政治協会」が受け、自民党に交付しています。この国政協からの交付は、前年比一億一千万円増の二十九億七千万円で、収入の11・4%を占めました。〇六年中に日本経団連の会長・副会長だった企業だけで、三億六千万円以上を献金。日本自動車工業会(八千四十万円)、石油連盟(八千万円)、日本鉄鋼連盟(八千万円)、日本電機工業会(七千七百万円)、日本医師連盟(一億五千万円)など業界・政治団体も多額の献金をしています。

 政党助成金は十億六千七百二十二万円増の百六十八億四千六百七十四万円。収入比は64・4%で、前年の60・2%を上回りました。収入の七割以上を、企業・団体献金と政党助成金に依存しています。

 支出は前年より六十八億四百七十万円減り、二百二億二千九百二十四万円でした。国政選挙がなかったことを反映し、選挙関係費と宣伝費が前年の二―三割に縮小しています。

 銀行からの借入金残高は、前年から九億円減ったものの依然七十一億円の巨額にのぼります。うち、〇三年六月に公的資金の注入を受け、事実上の国有化である「特別支援銀行」となったりそな銀行からは四十六億五千万円も借りています。

●民主党

 収入は十五億七千二百六十四万円減って百二十五億百九十三万円でした。党費と個人献金が若干増えたものの、政党助成金への依存は高まっています。

 個人献金は〇五年は二万七千円でしたが、今回は二百五十六万六千円でした。ただし、うち二百五十万円は国会議員四人の拠出によるものです。

 企業・団体献金は前年から二千二十七万円減り、八千百七十万円でした。内訳は、政治資金団体「国民改革協議会」から八千万円、連合から百万円、古賀一成衆院議員の資金管理団体から七十万円です。国改協に献金した企業・団体のうち最高額はデンソーで、自民党へと同額の千二百万円を献金しました。経団連役員企業も、住友商事(二百万円)、三菱重工業(二百万円)など四社が、自民党に比べると少額ながら献金しています。

 政党助成金は、十二億八千六百七十二万円減の百四億七千八百五十八万円でした。収入に占める割合は83・8%で前年の83・6%を上回り、依存度を高めました。

 支出は九十三億七千六十三万円減の七十三億五千八百八十九万円で、前年と比べ半減以下となっています。

●公明党

 収入は十六億九千四百九十六万円減の百四十四億三千八百八十七万円でした。政治資金団体「公明文化協会」からの交付が、三百万円増の二億三百万円です。ほかに、西日本新聞印刷から二十万円の寄付を受けました。公明文化協会の年三億一千五百万円の収入のうち三億円は、不動産売買とその利息によるものです。

 政党助成金は八千四百九十七万円減の二十八億五千八百七十八万円でした。収入全体に占める割合は19・8%です。

 支出は六億九千二百六十二万円減の百三十九億八千五十五万円。選挙関係費はゼロ計上でした。

●社民党

 収入は前年比九千三百三十八万円減の十九億五千四百七十六万円でした。企業・団体からの年間五万円を超す献金はありませんでした。

 政党助成金は前年比千六百十七万円減の十億六百二十五万円で、収入全体の51・5%を占めています。

 支出は五億七千九百九万円減の十四億四千三百十八万円でした。

●国民新党・新党日本

 国民新党には二億六千六百八十八万円(収入比60・7%)、新党日本には一億六千六万円(同91・0%)の政党助成金が交付されました。〇五年八月に結成された両党にとって、〇六年は一年分の助成金を満額受け取れる初めての年でしたが、依存ぶりが明らかになりました。

 国民新党は民主党から十万円、新党日本は国民新党から五十万円、民主党から十万円の寄付を受けています。

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