2007年9月14日(金)「しんぶん赤旗」

社会リポート

辺野古・大浦湾 環境アセスが自然壊す

アオサンゴ・前に進むカニがピンチ

“絶滅方法書”と保護団体

米軍・新基地計画


 「辺野古と大浦湾の貴重な自然の“絶滅方法書”だ」――日米両政府が沖縄県名護市の辺野古崎沿岸で進める米軍新基地建設計画。防衛省が作成した環境影響事前評価(環境アセス)方法書をめぐって批判が高まっています。(山本眞直)


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(写真)新基地建設用作業ヤードで埋め立てられる辺野古地先は絶滅のおそれが指摘されてるミナミコメツキガニの生息地=名護市辺野古(宮里昇氏撮影)

 潮が引き、広がる干潟。はさみですくいあげた砂を器用に口に運ぶカニ。面白いのが移動の仕方で、カニは横に移動するのが普通ですが、このカニは前方に進みます。

 カニの名はミナミコメツキガニ。野生生物の絶滅危惧(きぐ)種をリストアップしている沖縄県版「レッドデータブック」で、絶滅の恐れが指摘されています。このカニが群生する干潟、辺野古地先が新基地建設で埋め立てられようとしています。

 アセス方法書の中で、新基地の護岸のためのブロック製造などに使う「作業ヤード」にするというのです。

 新基地は、辺野古先にV字形の二本の滑走路(千八百メートル)と格納庫や燃料供給施設などを建設。建設予定地の沖合への移動を求めている沖縄県は「修正合意がアセス手続きの前提」と方法書の受け取りを拒んでいます。

 名護市の市民や労組、平和団体でつくる「ヘリ基地建設反対協議会」、環境団体も猛反発しています。

 方法書によれば辺野古地先と大浦湾海域に作業ヤードを三カ所つくります。

 沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団の東恩納琢磨団長は、「辺野古地先や大浦湾海域には貴重な生態系があり、ここを埋め立てたり浚渫(しゅんせつ)して作業ヤードをつくることは、ジュゴンの餌である藻場やサンゴなどの貴重な生態系の全滅を意味する」と指摘、アセス方法書の撤回を訴えます。

 県は「自然環境の保全に関する指針」で、辺野古から大浦湾一帯をもっとも保護を要する評価ランクI「自然環境の厳正な保護を図る区域」に指定しています。八日には大浦湾で、アオサンゴの群落が新たに確認されました。群落は「作業ヤード」予定海域に隣接しています。

 沖縄本島から南西に約四百七十キロも離れている石垣島では、北半球で最大規模といわれるアオサンゴ群落の保護のため、新空港建設計画が変更に追いこまれています。

 石垣島がアオサンゴの北限とされてきただけに、大浦湾での大規模な群落の発見は改めて辺野古海域の自然の豊かさと希少性を示しています。

 大浦湾でサンゴ礁保全の定点観測を続け、アオサンゴの群落を確認した沖縄リーフチェック研究会の安部真理子会長は、新基地建設にともなう自然への深刻な影響についてこう警告します。

 「アオサンゴのこれほどの群落は石垣島以外でははじめて見ました。もともと大浦湾にはユビエダハマサンゴやスイショウガイが背負って移動することから“歩くサンゴ”といわれるものなど珍しい、多様な生態系があります。『作業ヤード』や滑走路建設での埋め立、浚渫などによる土砂の移動、あるいは新基地(沿岸であれ、沖合であれ)での航空機による離発着や訓練で、なんらかの化学物質の流出が原因となり一部でも壊されるならば、一連の生態系への深刻な影響は避けられない」

 ヘリ基地反対協は、アセス方法書への意見書提出(二十七日まで)の取り組みを強めています。

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