2007年9月12日(水)「しんぶん赤旗」

海自派兵新法

米軍支援、手段選ばず


 海上自衛隊によるインド洋での「対テロ報復戦争」支援を継続するために政府・与党が狙う新法案は、米国の要求に応えるためであれば手段を選ばぬ安倍・自公政権の異常さを示しています。(田中一郎)


■ 派兵の継続を狙う

 テロ特措法は、海自による米軍などへの給油活動の根拠法です。期限が定められた時限立法のため、二〇〇一年に成立して以来、法「改正」による延長を三回、繰り返してきました。

 十一月一日に四度目の期限切れを迎えるため、政府・与党は、再び法「改正」で期限を延長しようと模索していました。

 ところが、七月の参院選で与党が惨敗し、同法の延長に反対の野党が参院で過半数を占めたため、情勢は一変。野党が反対を貫けば、十一月一日までに「改正」案を成立させられない可能性が生まれたのです。

 期限切れになれば、「改正」するはずのテロ特措法そのものが失効し、「改正」案の国会審議も不可能になり、海自艦隊も撤退することになります。危機感を抱いた政府・与党が、こうした事態の回避のため狙っているのが、新法案です。

 新法案では、国会審議が継続できるため、参院で否決されても、憲法上の特別の規定により、与党が多数を占める衆院で三分の二以上の賛成で再議決すれば、成立させることができます。そうすれば、いったん撤退した海自に再び活動を継続させることができるというわけです。

 しかし、再議決は七月に示されたばかりの国民の意思=参院の反対を封じ込めるものです。

■ 文民統制から逸脱

 新法案では、現行のテロ特措法に定められている国会事後承認規定も外す方向で政府・与党は調整を進めています。

 承認規定を盛り込めば、新法案の成立にこぎつけても、参院で野党が反対すれば否決されてしまい、海自の活動を継続できなくなるからです。国会承認規定は、イラク特措法でも定められている規定です。それさえ投げ捨てるのは、政府が掲げる文民統制(シビリアンコントロール)からも逸脱するものです。

■ 背景に米国の要求

 政府・与党が、海自の派兵継続に固執する背景には、米国の強い圧力があります。

 米国は参院選後、ブッシュ米大統領をはじめ、政府高官が再三、派兵延長を求めてきました。

 保守系の米シンクタンク・ヘリテージ財団のホームページに掲載された論評は「(派兵延長は米国の)対テロ世界戦争の継続にとって死活的であり、日本の対米関係の試金石だとみなしている」と“脅し”めいた主張までしています。

 新法案の政府方針が一斉に報じられたのも、ブッシュ大統領から派兵継続を求められた首脳会談(八日)後のこと。安倍首相は直後の記者会見で「(派兵延長は)国際的な公約」と力説し、「職を賭して取り組む」と表明しました。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp