2007年9月11日(火)「しんぶん赤旗」

テロ特措法延長

首相「職を賭す」


 【シドニー=山崎伸治】安倍晋三首相は九日午後、オーストラリア・シドニー訪問を終えて内外記者団と会見し、テロ特措法の延長が「国際的な公約となった」として、「私には大きな責任がある。活動継続のためにはあらゆる努力を行う決意だ。野党の理解をもらうため、職を賭して取り組む」と強調しました。

 安倍氏は「(米国の)同時多発テロでは日本人の尊い命が奪われたことを忘れてはならない」と指摘。「テロとのたたかい」で国際社会が連携しているなかで、「国際貢献を果たすことは私の主張する外交の根幹の一つだ」と述べました。

 記者団から、特措法延長が実現しない場合、内閣総辞職がありうるのかとただされたのに対し、「私の職責において、あらゆる力を振り絞って努力せねばならない。私は職責にしがみつくということはない」と述べ、総辞職も辞さないとの姿勢を示しました。


米国に顔向けた政治の現れ

志位委員長 痛烈に指摘

 この首相発言について日本共産党の志位和夫委員長は、十日の国会議員団総会で、「国民よりもアメリカに顔を向けた政治のあらわれ」と痛烈に指摘しました。

 志位氏は、首相発言が、ブッシュ米大統領との会談の直後におこなわれたことをあげ、「国際公約となった以上、これができなければ内閣総辞職だという論理のようだが、国民からは(参院選で)あれだけ厳しい批判を浴びながら居座る、しかしアメリカとの約束は果たせなければ総辞職するという」「これ一つとっても、この内閣は早期の退陣に追い込むことが当然だ」と強調しました。


民意に耳貸さず 対米公約に従う

 「職を賭してとりくんでいく」――安倍首相は、「テロとのたたかい」を口実に、海上自衛隊がインド洋で行っている米軍艦船などへの給油活動を、今後も続ける決意を示すために、自らの退陣まで口にしました。

 自公政治に「ノー」を突きつけた国民の審判に従わずに、「首相の職責」にしがみついてきた安倍首相が、対米支援という「職責」が果たせないなら、辞めるというのです。

 海上自衛隊の給油活動の根拠法であるテロ特措法の延長については、「朝日」「日経」「東京」各紙の八月末の世論調査で、ともに、延長反対が賛成を上回っています。民意は明確です。

 安倍首相は、そうした世論には耳を貸さず、インド洋での給油活動継続を米・豪の首脳に勝手に約束し、「国際公約」に仕立てたうえで、「国際的な公約となった以上、私には大きな責任がある」「職を賭してとりくむ」というのです。

 国民の意思には従わないのに、米国の御用が務められなければ退陣する――この政権が、どこに顔を向けた政権なのか、その逆立ちぶりを、これ以上なく、はっきりと示しています。

 安倍首相は、「テロとのたたかいにおける国際的な責任」を強調します。しかし、海上自衛隊が支援する米国主導のアフガン戦争は、多くのアフガニスタン住民の命を犠牲にし、日々の生活を破壊しています。戦争でテロはなくせず、テロの温床を広げるものでしかないことを示しています。

 安倍首相は、「国際社会」といいつつ、実のところ、米国の色眼鏡でしか世界を見ず、「国際貢献」といいながら軍事的な対応しか頭にありません。

 安倍首相は、「民主党はじめ野党の理解を得るために職を賭す」とも述べています。「何が何でも法を成立させるという強い決意を最大限の表現で表したもの」(高村正彦防衛相)であると同時に、「強固で対等な日米関係」を「外交の基盤」に掲げる民主党への圧力、ゆさぶりが狙いだと見られています。

 しかし、与党内からも「勝算のない賭け」などの声が出ているように、「死に体」といわれる内閣の、ますますの行き詰まりを示すものです。(西沢亨子)



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