2007年9月5日(水)「しんぶん赤旗」


日亜化学へ批判高まる

徳島 偽装請負是正の約束ほご

労働局 “調査を進める”

共産党が抗議 「青年の希望砕く」


 発光ダイオード(LED)で知られる日亜化学工業(徳島県阿南市)が「偽装請負を是正し、請負労働者千六百人を直接雇用する」と約束してから十カ月。同社は突然、“そんな約束などした覚えはない”といいだし、大問題になっています。世間を欺く態度に批判が高まっています。(徳島県・谷内智和)


直接雇用の合意を否定

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(写真)社内を視察する党議員調査団=8月30日、徳島県阿南市

 「組合側と当社との間で具体的な合意がなされたという認識はもっておりません」

 日亜化学は八月三十日、日本共産党議員調査団との協議の中で、全日本金属情報機器労働組合(JMIU)との間で交わした「請負労働者の直接雇用」の合意などなかったとうそぶきました。

 偽装請負が発覚したのは昨年十月。請負を装って派遣労働者を働かせているとして、JMIUに加入した労働者が徳島労働局(厚労省)に偽装請負をやめさせ直接雇用させるよう申告したのが始まりでした。

 県の有力企業だっただけに、県が仲介役を務めて協議が行われ、昨年十一月十日、日亜とJMIUは(1)三年以上働いてきた労働者に、三年働いてきた経験を最も重視する採用選考を行い、十二月一日付で契約社員として直接雇用する。適性を見て正社員への道を開く(2)今後も、働く期間が三年に達した請負会社の労働者も同様に扱う(3)請負会社の労働者の雇用や労働条件の改善が可能になるよう日亜化学としても配慮する―の三項目で合意しました。

 マスコミは「日亜化学千六百人直接雇用へ」と報道。飯泉嘉門知事は記者会見で「まさにこれは大きな前進。全国の企業の皆さんのリーディングケースになっていくのではないか」と絶賛し、組合員も徳島労働局への申告を取り下げました。

採用試験で組合員選別

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(写真)県と交渉する党調査団(左)とJMIUの組合員(正面)=8月30日、徳島県庁

 ところが同社は、二〇〇七年に入り合意をほごにする態度に出ました。

 三年以上働いた請負労働者を対象とした採用試験を一―二月に実施。合意に従えば、受験した六十六人の請負労働者は全員合格となるはずでしたが、実際は十八人。試験を受けた組合員一人も不合格となりました。

 さらに五―六月、請負会社で仕事がなくなった労働者も含めた中途採用試験を四十六人が受けましたが、十三人しか合格せず、組合員十人は全員が不合格となりました。

 派遣法に照らせば、同社には偽装請負をなくすため直接雇用を申し込む義務が課せられているのであり、選別する権利はありません。選別採用では偽装請負はなくなっておらず、組合員が直接雇用を求める申告を再び行ったのは当然でした。

 派遣法では、違法派遣を告発した労働者に対して、それを理由に解雇など不利益な取り扱いをすることを禁止し、違反者は処罰されます。

 しかも、組合員の所属する請負会社の業務が工場移転に伴って廃止となり、組合員は失業に追い込まれたままとなっています。これも、「請負会社の労働者の雇用が守られるよう配慮する」とした合意に反しています。

 党調査団は「世間を欺き、青年労働者の希望を打ち砕くものだ」と批判しました。

発注切られ失業状態に

 同社の居直りは孤立を深めています。仲介した県は党調査団に「合意内容はおおむね組合(JMIU)の主張するものであった」との見解を示し、「やれることをやっていきたい」と回答。徳島労働局も「申告に基づく調査を進めている。全力で取り組んでいきたい」と答えています。

 偽装請負を告発され、「法律が悪い」と開き直っていたキヤノンでさえ請負労働者八十三人全員を期間工としながらも、採用試験などせずに直接雇用しました。キヤノンは「告発を受けて、直接雇用への社会の関心、キヤノンへの注目を考慮した」とのべ、世論と運動に逆らえなかったことを認めました。直接雇用に背を向ける日亜の逆だちぶりが際立っています。

 JMIU徳島地域支部日亜分会代表の島本誠さん(34)も不採用にされた一人です。昨年九月、光洋シーリングテクノ(徳島県藍住町)で働く請負労働者が直接雇用を勝ち取ったことをインターネットで知り、同僚とJMIUに加盟しました。

 妻と六歳になる子どもの三人暮らし。三交代で働いても、月収は十八万円しかなく将来への不安を抱いていました。日亜化学と合意が成立した時は「正社員への道が開けた」と喜びました。

 ところが、不採用にされたうえ、請負会社の業務も日亜化学の発注が打ち切られたため失業に追い込まれました。七月で失業手当もなくなり、妻のパート収入だけが支えになっています。

党調査団に励まされる

 しかし、組合員たちは地域の労働者や住民に励まされ、直接雇用を求めてたたかっています。党調査団に合流して県、労働局と交渉もしました。

 島本さんたちが立ち上がるきっかけとなった光洋シーリングテクノ分会代表の矢部浩史さん(42)は「キヤノンでさえ直接雇用を決断しました。偽装請負をなくし直接雇用の流れは全国に広がっており、これに逆らう日亜の姿勢は許されません。直接雇用を勝ち取るよう全力あげて支援したい」と力をこめます。

 島本さんは「党調査団の人が自分のことのように訴えてくれ、力強い言葉をかけてくれたことに励まされました。偽装請負をやめよ、ワーキングプアなくせと願う全国の人の力を合わせて、日亜化学に約束を守らせ、一日も早く仕事につけるようがんばっていきたい」と話しています。



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