2007年9月4日(火)「しんぶん赤旗」

公費の妊婦健診5回に

札幌市が助成拡大


 札幌市は十月一日から、妊婦の安全な出産と健康な子どもの出生のために行っている妊婦一般健康診査の公費負担を現行の一回から五回に拡大します。政令都市では新潟市に続いての実施です。(田代正則)

 妊婦健診の助成拡大の対象は、来年一月一日以降に出産予定の妊婦です。三日から、追加となる四回分の受診票の配布が市内各区の保健センターで始まりました。

 初秋の日差しがあふれる札幌市白石区の勤医協札幌病院の診療室。「何か不安なことはありませんか」「お通じはどうですか」。産婦人科の長島香医長が健診に訪れた妊娠九カ月の妊婦にやさしく声をかけています。

 付き添いの夫は「毎日(妻の)おなかを触っています」と話します。長島医長は「お産にスキンシップは大切ですよ」と笑顔を返します。

 妊婦健診は、妊娠三―六カ月は月に一回のペースで受診します。それ以降は、三週に一回、二週に一回と回数が増え、出産までに十二回以上、受けることになります。

 長島医長は「初期の受診には血液検査などもあって一万円を超える費用がかかる場合もあり、生活が苦しい人は受けたくても受けられないことがあります。健診を受けやすくするためにも、公費負担の拡大でサポートを充実するのは、いいことです」と指摘します。

 同病院に通う来年二月出産予定の女性(37)=札幌市東区=は「無料の受診票は、一番お金がかかる検査で使ってしまいました。今回助成が増えて、本当によかった」と喜びます。

札幌市 妊婦の無料健診拡大

出産への不安・孤立感 取り除くため充実必要

 この女性は初めてのお産です。「出産にこんなにお金がかかるとは思ってもみませんでした。健診には一万円札を持って『これで足りるかな』と心配しながら、かかっています」

 奈良県で、年齢の近い女性が救急車の搬送中に死産した事件はひとごとではありませんでした。「かかりつけのお医者がいなかったと聞きましたが、妊婦を支える体制がしっかりしていれば、助かったんじゃないでしょうか。妊娠には喜びと同じくらい不安があります。ちょっとおなかをぶつけても気になります。安心して子どもを産める環境をつくってほしい」と話します。

 長島医長が担当していた妊婦のなかにも、夫が失業し、収入がなくなって健診に来なくなった人がいました。市保健センターで実施している血圧と尿の無料検査を受けるように連絡したものの、「超音波検査などは受けられず、十分とはいえません」といいます。

 一度も健診を受けず、陣痛がきて“とびこみ出産”に来る妊婦も年二、三人います。「健診で医師の説明を聞いていないので知識が乏しく、破水に気づかずに菌が入って危険な状態だった女性もいました」と長島医長。

 「健診を受けない人には、お金もないし、身近に声をかけてくれる人もおらず、孤立している人が多いんです。産後も、お母さんには子育ての不安がつきまといます。独りぼっちにしないよう、心のケアも大切です」

 新日本婦人の会道本部で子ども・教育担当の小松千秋さんは「お母さんたちからは、出産にお金がかかるという声が出ています。こうした不安を取り除かないと少子化対策はすすみません。今回の妊婦健診無料拡大は評価できます。いっそうの充実へ全額無料化を実現してほしい。地方の産婦人科を増やすことも切実です」と話しています。


党市議団が繰り返し要求

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(写真)政府要請を行う紙参院議員(正面右から6人目)と党札幌市議団ら=2006年9月6日、東京

 日本共産党札幌市議団は、母子の命と健康を守るために欠かせない妊婦の無料健診の回数を増やすよう市議会で繰り返し取り上げてきました。少子化対策の強化を求める運動と国の対策の充実を受けて、いち早く拡大が実現しました。

 昨年九月には、紙智子参院議員、宮内聡国会議員団北海道事務所長とともに市議団が厚生労働省に要請。厚労省側は「交付税の上積みが考えられ、総務省にお願いしている」と回答しました。

 二〇〇七年度予算で少子化対策の地方財政措置が増額になり、厚労省は今年一月、「妊婦健康診査の望ましいあり方」を市町村に示しました。

 二月の第一回定例会の代表質問で、井上ひさ子市議が「十四回程度が望ましい。財政厳しき折でも五回程度の実施が原則」と追及しました。

 さらに第二回定例会に先立つ五月、市議団が無料健診五回実施や救急車の増車・救急隊の増強を盛り込んだ予算要望書を市に提出。上田文雄市長が「五回に増やしたい」と回答し、同定例会で補正予算が組まれました。



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