2007年9月3日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

住民、行政 みんなで残した

町並み保存で活性化


 住民と行政が力を合わせ、町並みを保存し地域を活性化させる取り組みが、各地で行われています。愛媛県内子町と埼玉県深谷市を紹介します。


よみがえった内子座

愛媛・内子町

地図

 内子町(うちこちょう)は、四国の西部、愛媛県のほぼ中央部に位置する町です。二〇〇五年一月、旧内子町、五十崎町、小田町が合併した人口二万人、面積二百九十九・五平方キロの中山間の町です。

 県都松山市から南西四十キロ、JR予讃線・特急で二十五分、バスで一時間、松山自動車道、内子・五十崎インターより車で五分と交通の便は恵まれています。

 内子町は町並みと芝居小屋のある町として、また、九条の会の呼びかけ人であるノーベル賞作家の大江健三郎さんが生まれ育った「四国の深い森」大瀬のある町として知られています。

三年間かけ工事

 JR内子駅より歩いて東へ十分、内子座があります。本格的な歌舞伎劇場として一九一六年に建てられ、時代の移り変わりとともに戦後は映画館や商工会の事務所として使われました。七〇年代には駐車場として取り壊しの声もありましたが、「町にとって必要なことは何か」との視点から保存の方向が決まり、三年間かけて復元工事が行われて現在の姿によみがえりました。

 内子座は「残った」ことに価値があるのではなく「残した」ことに価値があるともいわれ、現在、文楽、歌舞伎、落語などの伝統芸能をはじめ、前衛的芝居やコンサートなどプロの公演と合わせ、シンポジウムや地域住民の発表会など年間八十日、約一万六千人の人々に活用されています。

 今年も、町民が中央の文化芸術に直接ふれるために始められた文楽公演は、実行委員の皆さんと行政の協働の力で十一回目を迎え八月二十五、二十六の両日、町民をはじめ県内外の観客二千人が人間国宝の芸を堪能しました。

住民が主人公に

 この内子座からさらに東へ歩を進めると「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている坂町に入ります。坂町、八日市、護国と旧松山街道沿いの一・五キロにわたる町並みは江戸中期から明治時代に、ろうそくや、化粧品などの製造に使う木蝋(もくろう)=ハゼの実から採った油脂=生産で栄えた地区の建物群が残り、大小さまざまな建物が軒を連ね変化に富んだ景観を楽しませてくれます。

 この町並みが残っているのも、七〇年代から共産党も支持賛同してきた町並みの保存・再生を、まちづくりの中核にすえて住民と行政が共同してきた成果です。町並み保存の指導的役割を一貫して果たしてこられた、元町職委員長の岡田文淑氏は「まちづくりは、たんに町並み景観を良くするだけでなく、地域住民に自分たちが主人公という自治意識を芽生えさせるものでなければなりません」と言っています。

 今後の“村並み保存”“山並み保存”によるまちづくりが、住民主人公の福祉豊かな町づくりの方向で進められるよう尽力したいと思います。(宮岡徳男町議)


「深谷シネマ」 核に

埼玉・深谷市

地図

 埼玉県深谷(ふかや)市の中心市街地は旧中山道の宿場町で、今もその面影を残したレトロな街です。

 創業三百年を超す商店や煉瓦(れんが)造りの蔵が今も所々にあります。路地に入ると和菓子屋さんや銭湯もあり、ほっとするちょっと懐かしいたたずまいがあります。

一月に2千500人

 市の「中心市街地活性化計画」で五年前、空き店舗を活用して旧銀行を改装した「深谷シネマ」(五十席)がオープンしました。運営はNPO(非営利団体)法人「市民シアター・エフ」が行い、来場者は五年間で十二万五千人、徐々に増えてきて最近は、一月に二千五百人を超える月もあり、街ににぎわいが戻りつつあります。

 来場者は中高年の方が主で市内と近隣からお見えになります。皆さんからは「近くに映画館があって楽しみが増えたよ」「映画を見て、食事をするのが週の“日課”になりました」「看病で疲れた時の気分転換で来ます」などの声が寄せられ、自身の生活の中で「映画」という文化を楽しんでいます。

 中心市街地の活性化を目的にしたNPOの「深谷にぎわい工房」は、会員所有の煉瓦倉庫を改装した、「れんがホール」を市民活動の場に提供しています。またNPO「木犀(もくせい)」は建築家が中心で、以前造り酒屋だった「七ツ梅」の建物(八百坪)をオーナーと一緒に再利用の取り組みを行っています。

 これらの三つのNPOは、ともに深谷の街なかのにぎわいづくりを目的にしていて、日常的に協力し合っています。深谷TMO(事務局は商工会議所)や深谷市との協働(パートナーシップ)を日ごろから大切にしています。

願いつなぎあい

 現在、商店街エリアでは区画整理事業が進行中です。これからの街なかのデザインとして、市民が憩い・商い・働き・学び・遊び・交流しあえ・誰でもがデビューできる「デビュー生活街」の創造をめざしていきたいと願っています。

 「深谷シネマ」を核にして、深谷映画祭・ふかやFC(フィルムコミッション)・渋沢栄一翁の映画化などの輪が広がっています。「れんがホール」では月一回の「ライブコンサート」、「深谷駅市民ギャラリー」でも月一回の「歌声喫茶」が開催され、多くの中高年者でにぎわっています。五月には旧酒造跡の再活用をめざしてこの三つのNPOの共同でまちづくりのシンポジウムも開催しました。

 自分たちの住む街の歴史や文化を味わいながら、今ある資源や資産を生かして市民の願いをつなぎあって、人のぬくもりと文化の薫るすてきな街を市民・NPOと行政が力を合わせ実現していきたいと願っています。

 どうぞ皆さん「シネマ」&まち歩きに深谷へ遊びに来てください。「深谷シネマ」のHP=http://fukayacinema.com/(NPO法人市民シアター・エフ理事長 竹石研二)


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