2007年8月27日(月)「しんぶん赤旗」

反貧困 運動さらに

生活保護問題対策会議が集会


 「市民の力で貧困を絶つ」―生活保護問題対策全国会議は二十六日、東京の法政大学市ケ谷キャンパスで東京集会を開きました。「貧困に抗する力を広げていこう」をテーマに交流、「すべての人が、人に値する暮らしをおくる社会をつくるために労働、福祉、消費者などの枠を超え、手をたずさえていこう」との集会宣言を採択しました。

 生活保護問題対策全国会議は、貧困問題を解決していくために法を無視した生活保護行政の改善などを求め六月に発足したもの。北九州餓死事件で小倉北福祉事務所長の刑事告発(二十四日)の中心となりました。

 集会では、杉村宏・集会実行委員長(法政大教授)が開会あいさつ。北九州餓死事件の報告や全国で起こっている生活保護の窓口規制(水際作戦)の実態などを報告・交流しました。日本女子大の岩田正美教授が基調講演し、この一年間で反貧困の運動が大きく広がったことを振り返りながら、「貧困を放置すれば社会は不安定になる。さまざまな運動が貧困問題を核に連帯していくことが大切だ」と訴えました。

 パネルディスカッションで、暉峻淑子埼玉大学名誉教授は「貧困はつくられたもの。これに対抗する人権をもつ人間が人権のために手をつなぐことだ」と強調。菅井義夫・中央労福協事務局長は「不正や理不尽なことに立ち向かう情熱をなくしたら労働運動ではなくなる。原点に立ち返り運動したい」とのべました。

 鴨田哲郎弁護士(日本労働弁護団幹事長)は「企業利益第一、効率第一の社会をつくりかえる運動の一翼を担いたい」と表明。宇都宮健児弁護士(日弁連多重債務対策本部・本部長代行)は、「基調となる考えは人権であり、人間の尊厳を守ること。この立場でネットワークをつくっていこう」とのべました。尾藤廣喜弁護士(同会議代表幹事)は「反貧困の運動に参加して若い人が自分たちの問題として参加していることに勇気づけられる。連帯して運動を広げたい」と訴えました。

 与野党の国会議員があいさつし、日本共産党からは笠井亮衆院議員があいさつしました。


申請拒否 水際作戦 これが実態

録音テープ公表

 集会では生活保護申請者を福祉事務所窓口で追い返す「水際作戦」の実態が申請者とのやりとりを録音したテープによって明らかにされました。

 場所は大阪の福祉事務所。申請者夫妻は、夫が網膜剥離(はくり)、白内障、妻がうつ状態にあり、無職・無収入。食事は友人の差し入れに頼っていました。

 家賃が十一万円(滞納している)で住宅扶助基準(大阪は上限五万四千円)を超えるので生活保護の適用はできないと申請さえさせませんでした。

 二回目の申請となる六月二十七日のやりとり…。

 申請者「食事代すらない。転居先も探せる状況にない。どうしたら」

 職員「自分たちで努力して転居先を見つけないと話がすすまない」

 申請者「努力しているが転居にはお金がいる」

 職員「生活保護が救済する問題ではない。どこに住むかは自分の問題」

 しかし、厚労省の局長通知は、困窮状態にあれば保護し、その後保護費で生活できる住宅に転居できるよう敷金・転居費用を支給することができるとしています。

 三回目の申請(七月三日)には弁護士が同行、係長に問題点を指摘。

 係長「転居先を先に確保するよう指導するのは当然の対応」

 弁護士「まず保護し、基準額をだせばよい」

 係長「基準額をだしても高額家賃では生活がなりたたない。保護の趣旨に反する」

 弁護士「話が逆転している」

 係長「大阪市では水際作戦をしていない。北九州市とは違う」

 夫妻は、弁護士の応援によって生活保護の適用となりましたが、「水際作戦」の犠牲となるところでした。



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