2007年8月21日(火)「しんぶん赤旗」

地価 「局地的高騰」と「二極化」

背景に不動産証券化

あおる「都市再生」政策


 最近、都市部を中心に地価が上昇しています。しかし、土地取引の目安とされる地価公示(二〇〇七年一月一日時点)や相続税や贈与税の算定基準となる〇五年分の路線価を見ると、七〇年代の“列島改造”による全国的地価高騰や八〇年代の東京都心から始まり、やはり全国に波及した“地価狂乱”とは違った現象が起こっています。

 格差社会が問題になっていますが、地価もその様相を反映し、地域格差を色濃くしています。東京、大阪、名古屋の三大都市圏においては上昇し、地方圏においては引き続き下落しているものの仙台、札幌などの中核都市では一部地域で上昇しています。全国平均で見ると、住宅地および商業地ともに十六年ぶりにわずかな上昇となっています。この現象は地価の「二極化」ともいえます。

 いまひとつの特徴は、路線価では東京、大阪、名古屋、福岡の調査時点の一部で、地価上昇率が30―40%を超えたことが示すように「局地的高騰」となっていることです。これは正常な需給関係による地価を表しているとはとても思われません。また東京ではいままで、上昇地点は銀座、丸の内などに限られてきましたが、下北沢(世田谷区)、立川(立川市)、吉祥寺(武蔵野市)、高円寺(杉並区)など山手線外でも最高路線価が上昇。商業地整備などの再開発計画が動きだしたことが背景にあるとされています。

 東京以外でも上昇に転じた地点が増えました。横浜市では横浜駅西口バスターミナル前通りが35・9%上昇。大阪市では御堂筋沿いの最高路線価が十四年ぶりに上昇。「梅田貨物駅再開発計画など大型開発が目白押しで、集客力が上昇するとの期待が路線価を押し上げたようだ」(「日経」八月二日付)とされています。

投信の対象に

 地価高騰を招いた要因はいくつかあります。東京都心部の六、七千万円から一億円といったマンションや超高層オフィスビルの建設ラッシュが高騰を招いています。しかし注視すべきことは、不動産証券化という新たなスキームを用いた不動産投資市場が拡大していることが、土地市場が活発化している一つの要因として挙げられていることです。

 上場企業の不動産取引のうち、Jリート(不動産投資信託)などの投資ファンド(基金)が買い手となる割合が年々増加し、売買価格ベースで見ると、〇六年度では購入主体の約七割がJリートなどの投資ファンドとなっています。

 〇六年末時点でJリートが保有する土地資産の残高は五兆四千億円になり、前年に比べて58%増えています。金融庁・日銀の監視強化をうけ、銀行は不動産向け融資に慎重になっていますが、東京証券取引所に上場された不動産投資信託の取引の約半数は外国人投資家が占めるとされるように、海外からJリートへの資金流入は止まらず、それが不動産に向かっている、との報道(「日経」〇七年三月二十三日、四月六日付)がそれを端的に示しています。Jリートを中心とした不動産投資マネーはすでに十兆円を超えています。

ビル建設次々

 この“ミニバブル”をあおっているのが政府による「都市再生」と称する建築の規制緩和による都市再開発政策です。例えば、「都市再生」の目玉のひとつで最近つぎつぎビル建設がおこなわれている東京駅周辺――。〇五年十月に完成した「東京ビルディング」や〇七年四月に完成した「新丸の内ビルディング」は、東京駅の未利用容積率を移転するなどの措置によって、1700%以上の容積率となりました。「小泉純一郎政権が重要政策として進めた『都市再生』を支援する規制緩和は、地価の二極化を促進する一因となった」(『エコノミスト』〇六年十月二十四日号、「大都市圏で地価上昇の次にくるもの」石澤卓志・みずほ証券アナリスト)との指摘もあります。地価公示は不動産取引の参考例とされていますが、「参考例として使えない、収益性などでは説明のつかない不合理な高値取引も目立った(国交省)」(「朝日」〇七年三月二十三日付)ともいわれ、これは明らかにミニバブルが発生している証左といえます。

東京集中加速

 このような一部地価の急騰を受け国土交通省では十一月にも大都市の中心部の地価高騰地域に限った新たな地価調査を始めるとしているほか目立った対策を講じる気配は見られません。

 「僕はバブルになって世界中のオイルマネーが入って、東京の地価が五倍ぐらいになる、それだけの期待感を、世界は日本に持ってくれていないというのは寂しいと思います」。これは、国交省の諮問機関である国土審議会土地政策分科会企画部会でのある委員の発言です。「二極化」と「局地高騰」という最近の地価高騰をこのまま放置すれば、「東京一極集中」といういびつな国土づくりをさらに加速させ、地域間の格差を広げることは明らかです。

 いま銀行や郵便局がけん引する「投信ブーム」が起こっています。この運用先になっているのが債権より利回りの高いリートです。仮に「リート・バブル」が崩壊すれば多くの一般投資家が損失を受けます。このようなことを防止するうえでも地価の「ミニバブル」といった投機的手法を規制する実効ある施策と、投機をあおる「都市再生」政策を見直すべきです。(日本共産党・国民運動委員会 高瀬康正)


 Jリート 日本版の不動産投資信託のことです。不動産を証券化して投資家から資金を集めて運用する金融商品です。賃貸収入や売却益を配当として投資家に分配します。投資家は投資口を株券のように証券市場で売買できます。


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