2007年8月14日(火)「しんぶん赤旗」

諫早湾閉め切り10年 第3部

取り戻せ 宝の海(11)

公共事業の“依存症”


 JR長崎駅の改札口を出ると、大きな看板が目に飛び込んできます。「二十一世紀の長崎県の発展のために 長崎新幹線の建設推進!」と大書してあります。

 新幹線は長崎県がねらう次の大型公共事業です。しかし、こうした公共事業依存の県政が本当に県民のプラスになるのでしょうか。

経済後退

 諫早湾干拓事業は二千五百億円の巨費をつぎ込み、巨大な環境破壊と深刻な漁業の衰退をもたらしました。しかし、それだけではありません。問題なのはこれだけの犠牲を払いながら、長崎県の経済指標は干拓事業の着手前より後退していることです。

 干拓推進の旗を振ってきた前知事の高田勇氏が当選した一九八一年度の一人当たりの県民所得は、四十七都道府県中四十二位でした。本格的に干拓工事が始まった九二年度以降の十五年間は、四十四―四十六位の間で低迷しています。

 財政にどれだけ余裕があるかを示す「財政力指数」(〇五年度)は長崎県が〇・二五で、全国平均〇・四三を大きく下回り、九州・沖縄八県の中でも最低の数字です。

 財政構造の硬直化を示す経常収支比率は、95・5%(全国平均92・6%)。自治体の借金率を示す起債制限比率なども危険ラインを超えていると指摘されるなど、長崎県がいかに借金体質で財政が硬直化しているかを示しています。長崎県自身も〇四年度の「中期財政見通し」で「財政再建団体に陥る可能性を否定できない」と認めているほどです。

 その危機的財政状況の上に干拓事業のつけがかぶさってきます。

 宮入興一・愛知大学教授の推計によれば、長崎県の今後の干拓事業関連の負担支払額は、潮受け堤防の負担額約二百三十億円(〇七―一三年度)などで計三百四十七億円にもなります。さらに今後、どれだけ増えるか不明の調整池等管理運営費が上乗せされるといいます。

 諫早湾干拓事業は、県民に利益をもたらすどころか、財政の危機的状況の大きな要因になっていることがわかります。

反省なく

 しかし、なんの反省もなく、次は新幹線だといいます。長崎―博多間を二十六分短縮するために総事業費二千七百億円。県負担は三百十二億円にのぼり、財政は深刻になるばかりです。それでも新幹線というのは、それなりのわけもあります。

 「九州新幹線建設を利権にした自民党の地元国会議員は受注企業から信じがたいほどの多額の献金を受けている」。日本共産党の小沢和秋衆院議員(当時)が〇三年二月の予算委員会で追及しています。その額は、九五年からの七年間で自民党の古賀誠元幹事長、山崎拓元副総裁など九国会議員と自民党熊本県連に計約十億二千万円。一人で一億三千七百万円にのぼる議員もいました。

 「私もびっくりしている」と答弁に立った扇千景国土交通大臣(当時)も驚きを隠さなかったほどです。

 長崎県民や有明海沿岸住民の痛みを忘れ、こうした「政・官・業」の癒着を断ち切れない自民党と長崎県政、それを支えてきた民主、公明、社民の「オール与党」政治の転換が求められています。開門調査を実施して有明海を救うのか、水門を閉めたままで見殺しにするのか。今、有明海は重大な岐路にあります。

 (ジャーナリスト 松橋隆司)(おわり)


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