2007年8月6日(月)「しんぶん赤旗」
「緑のオーナー制度」
9割以上が元本割れ
国の責任放棄、国民にリスク
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スギやヒノキの国有林を育成する費用を国民から募った林野庁の「緑のオーナー制度」で、木材を販売したときにオーナー側に渡る分配金が出資額を大幅に下回る事実上の「元本割れ」する事例が九割を超えています。
元本割れは、国産材価格が外材輸入増などを要因に下落したためですが、危険性を十分説明せずに出資金を集めた同庁の責任が問われます。
同制度は、オーナーが出資金を一口五十万円(一部で二十五万円)支払い、森林整備を林野庁がおこないます。十五年から三十年後の伐採時に入札にかけ、収益を林野庁と出資したオーナーが折半する仕組みです。
昨年度まで伐採した五百七カ所のうちオーナーへの分配金が五十万円以上となったのは二十七カ所にとどまり95%が元本割れしています。二〇〇六年度の分配金は平均二十九万五千円でした。
同庁は、一九八四年度から九八年度にかけ、のべ約八万六千の個人・団体から約五百億円の資金を集めました。林野庁は、出資を募るさいに「3%程度の利回り」とか「二階建ての住宅の木材に相当する収益」などと試算を示して募集をすすめてきました。募集パンフレットに「元本を保障しない」と書いたのは募集九年後の九三年度からだといいます。九九年度からは、対象になる森林が減ったとして公募を休止しています。
立ち木価格は輸入材におされ、スギやヒノキが制度導入時に比べ二、三割の低水準になっています。最近は輸入材の値上がりで国産材価格回復のきざしもありますが「すぐに五十万円を超える状況はむずかしい」(林野庁国有林野管理室)といいます。
“利殖をあおる”
警告してきた日本共産党
日本共産党は、「緑のオーナー制度」について、“投資すればもうかる”と宣伝をして加入をすすめることは間違いだと当初から指摘してきました。保安林が多く本来、国が責任をもつべき国有林の整備資金を、国民負担でおこなったことが破たんしたといえます。
同制度が導入された一九八四年の国会で中林佳子衆院議員(当時)は「三十年後に投資されたものが必ず保証されるという見通しもない」と指摘。さらに国有林の整備をする職員を減らす計画になっていたことから「国有林野事業の使命の放棄につながる」と批判しました。
八七年の国会で国有林問題が審議されたときも下田京子参議院議員(当時)は、「断定的に全く間違いなく収益が上がるということで第三者から資金を集めることは許せないと思う」とのべています。下田議員は、「緑のオーナー」募集に使われたパンフレットに「木造二階建ての住宅に使われる木材に相当する収益」などと利殖をあおる表現があるとのべ、「二、三十年後にちゃんと幾分かの利益になってかえってきますよという、そういうもので集めたら間違い」と指摘していました。(中沢睦夫)


