2007年8月2日(木)「しんぶん赤旗」

安倍内閣 疑惑にフタ 幕引き

2代目農水相 赤城氏わずか2カ月


 「政治とカネ」をめぐる疑惑を明らかにしないまま自殺した松岡利勝前農水相の後任、赤城徳彦農水相もわずか二カ月で辞任しました。架空事務所費疑惑、政治活動費の二重計上など次から次へと出てくる問題について、説明責任をはたすことなく―。(藤沢忠明)


問題献金あいつぐ

 農水省所管の独立行政法人「緑資源機構」の官製談合事件とのかかわりが指摘されていた故松岡農水相。後任の赤城氏も就任早々、同機構発注の業務を受注する業者でつくる「特定森林地域協議会」の政治団体、「特森懇話会」から「励ます会」などのパーティー券名目で、二〇〇三―〇五年の三年間で計二十六万円の献金を受け取っていたことが指摘されました。

 赤城氏は、「適正に処理されているが、農林水産行政を進める立場から返却するよう(事務所に)指示した」(六月八日)と返却しました。

 「なたね契約栽培推進対策事業費」などの補助金を農水省から受けていた全国農業協同組合連合会(JA全農)など、補助金交付法人からの献金を禁じている政治資金規正法違反の問題を取り上げたのは、日本共産党の紙智子参院議員でした。

 六月十二日の参院農水委員会で、「補助金交付を受けている法人、団体からの献金は『税金の還流』以外のなにものでもない。即刻、返却すべきだ」と追及され、赤城氏は、「適切、適正に処理するよう指示しているが、調査のうえ、適切に処理していきたい」と答弁。その後、JA全農分は個人献金だったとして「訂正」の措置がとられています。

 赤城氏は、全国の治山、林道の公共事業などを請け負う業者らでつくる社団法人「日本林業土木連合協会」と一体の政治団体、「林土連懇話会」から〇三年、〇五年に各二十万円の寄付を資金管理団体「徳友会」が受け取っていながら、政治資金収支報告書に記載していないことも国会で取り上げられました。

 この献金もあわてて訂正しています。

4億円の事務所経費

 赤城氏の政治資金集めの「財布」=政治団体は、五つあります。茨城県筑西市の実家を所在地とする「赤城徳彦後援会」、東京都世田谷区の妻の実家を所在地とする「徳政会」は、ともに事務所の実体がないにもかかわらず、巨額の事務所経費を計上していました。

 九六年から〇五年の十年間で、政治資金収支報告書の報告で、領収書のいらない経常経費(事務所費、光熱水費、人件費、備品・消耗品費)の総額は両団体あわせて約一億円にものぼります。

 東京・西新橋のビルにあった「つくば政策研究会」は、九六年八月に同ビルを退去していながら、九七年から〇三年の七年間で計千二百十五万円の経常経費(事務所経費)を計上していました。

 事務所費も光熱水費もタダの議員会館に「主たる事務所」を置く資金管理団体「徳友会」は、九六年から〇五年までの十年間で、計八千二百万円の経常経費を計上、水戸市のビルにある赤城氏が支部長の「自民党茨城県第一選挙区支部」も同じ十年間に計一億九千万円の経常経費を計上しています。

 五団体あわせて約四億円にのぼる事務所経費は、いったい何にどう使われたのか―。「適正に処理している」のなら、領収書をすべて公開すべきです。

領収書は二重使用

 「検察が重大関心」と週刊誌も指摘しているのは、政治資金の報告で、赤城徳彦後援会と「第一選挙区支部」が、コピーした一つの領収書を二重使用、政治活動費を二重計上していた問題です。架空計上と同じで脱税のようなものというのです。

 第一選挙区支部の〇三年の収支報告書によると、九月十一日、「案内状発送費」という名目で二回、計約二十万円の支出が記載されています。一方、後援会の報告書にも、「機関紙誌の発行事業費」のうち、「荷造発送費」として、同日、同金額の支出を記載しています。

 ところが、両団体が報告書に添付した「水戸駅前郵便局」「水戸中央郵便局」の領収書のコピーは、まったく同じもので、政治活動費を二重計上していたことになります。しかも、後援会の報告書には、「荷造発送費」の支出先として、「水戸市役所前郵便局」とあります。

 これらは、収支報告書の虚偽記載にあたり、政治資金規正法では、五年以下の禁固、百万円以下の罰金が科せられます。

任命時に指示せず?

 「農水大臣任命の際、安倍総理から『政治とカネ』の問題について何らかの指示なり注意があったか」―。紙議員は、赤城氏に、六月十二日の参院農水委の冒頭、こうただしました。

 赤城氏は、即答できる質問のはずなのに、官僚が用意した文書をさがしたあげく、「農政の諸課題についてしっかり取り組むようにということで、とくに『政治とカネ』の問題で、ということでのご指示ではございませんでした」と驚くべき答弁でした。

 松岡氏の「政治とカネ」問題が未解明のなか、後任大臣に何の指示も注意もしていない―。二代の農水相をかばい続けた安倍首相の任命責任が厳しく問われています。

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